机に向かい、手紙の封を切った。夏哉からユリ宛の手紙には触れず、小さく畳まれて添えられていたメモを取り出す。


他人への手紙の封を勝手に開けてしまったことへの背徳感と罪悪感を迫り上がる前に嚥下し、逡巡した末にメモを開いた。

たったの一行、ほんの一言の文字に、目の前が真っ暗になって、それから頭まで真っ白になった。

夏哉は、もしかしたら本当は生きているのではないか、と馬鹿げた妄言までちらつく。


「そんなわけないのに」


声に出さなければ、やっていれられなかった。

憤りに似たものが込み上げた。その行き場はどこにもなく、すぐに沈んでいく。

わかるのは、夏哉の方が一枚上手だったということ。


『 ユリに聞け 』


今更だけれど、きっとこの旅はわたしにとって意味のあるものなのだ。

わたしを介すことなく届けたいのなら、住所を書いていれば良かった。

それがわからないのなら、ひとりひとりの所在を最初のわたし宛の手紙に書いておけば済む話だった。

それなのに、順々に会わなければ最後のひとりにたどり着けないなんて、意図は理解できないにしろ意味があることはわかる。


夏哉にとってもわたしにとっても、ユリは幼馴染みという存在だったはずだ。

どう基準を、どの垣根を越えられたら『友だち』に認定されるのだろう。


「ならやっぱり、ユリに会わなきゃ……」


玄関さえ強行突破できたのなら、面と向かって話すことができなくとも、部屋のドア越しに会話はできる。

わたしが一方的に話すことになったとしても。


近所ということもあって家同士の仲は悪くない。

ユリがあまりわたしのことを良く思っていないと知っていて、ユリのおばさんに、あの子がごめんね、と謝られたことだってある。


やはり、おばさんに頼んで家にあげてもらうしかない。

ユリが外に出るタイミングを四六時中見張るわけにもいかないし、そもそも、ユリはこのところ学校へ行っていないのだ。

姿を見かけないなとは思っていたけれど、おばさんから学校を休みがちになっていると聞いたのは、たしか十一月頃だったか。