「お前にとって、誰かを傷つけてしまうことの方が怖いんだろうけど……。まあ、俺はお前ごときに何言われても平気だから、安心しろ。お前が面倒な性格してんのなんて、もう十分分かってんだよ」
「瀬名先輩……」
「だから、一緒にいよう。琴音」
傷つけてもいいから一緒にいようと、瀬名先輩は言ってくれているのだろうか。
こんな優しさを、とてもじゃないけど受け止め切れないよ。
どうしたらいいのか分からないよ。
でも、今は自分の気持ちに素直になりたい。
ちゃんと伝えなきゃって、強く思ったから、震えた声を絞り出す。
「私、瀬名先輩が卒業しても、一緒にいたい……」
「うん」
「ずっと、一緒にいたいです……っ」
そう胸の中でつぶやくと、抱き締められる力がいっそう強まった。
ずっと、ずっとずっと、母親の言葉を気にして、自分の性格を自分で決めつけて、人と深くかかわることを恐れて生きてきた。
今までひとりで抱えてきたすべてが、走馬灯のように頭の中をかけめぐっている。
ねぇ、ばあちゃん……。
ばあちゃんと死ぬ間際に約束したあのこと、そういえば大事な部分をちゃんと受け止めていなかった気がするよ。
『友達は作らなくてもいいけど、自分なりの思い出は作れたらいいね』と笑ったあとに、ばあちゃんは一言付け加えていたんだ。
『ひとりでいることと、孤独でいることは、意味が全然違うよ』、と。
どうしてこんなに大切な言葉を、忘れていたんだろう。
ばあちゃん、本当だね。全然違うね。
ちゃんと言いたことを理解するのに、こんなに時間がかかっちゃった。
私は意地になって、孤独になろうとしていたんだ。
私のことなんて誰も分からないと、分厚い鎧を身に纏って、独りよがりな考えばかりだった。
孤独は自分じゃ解決できないのに、誰の話も聞かずに自ら世界を狭めていた。
でももう、そんな自分はどこかに消えてしまった。
だって、瀬名先輩が、もうこんなに自分の胸の中に大きく存在しているから。
“独り”じゃない。瀬名先輩が、ここにいる。
「瀬名先輩、なんでこんなに優しくしてくれるんですか……」
堪らず問いかけると、呆れたような声が上から降ってきた。
「……お前さ、俺がどんな条件で記憶障害が起こるかちゃんと分かってんだよな」
瀬名先輩の心臓の音が、どくんどくんと耳の鼓膜を震わせる。
「瀬名先輩……」
「だから、一緒にいよう。琴音」
傷つけてもいいから一緒にいようと、瀬名先輩は言ってくれているのだろうか。
こんな優しさを、とてもじゃないけど受け止め切れないよ。
どうしたらいいのか分からないよ。
でも、今は自分の気持ちに素直になりたい。
ちゃんと伝えなきゃって、強く思ったから、震えた声を絞り出す。
「私、瀬名先輩が卒業しても、一緒にいたい……」
「うん」
「ずっと、一緒にいたいです……っ」
そう胸の中でつぶやくと、抱き締められる力がいっそう強まった。
ずっと、ずっとずっと、母親の言葉を気にして、自分の性格を自分で決めつけて、人と深くかかわることを恐れて生きてきた。
今までひとりで抱えてきたすべてが、走馬灯のように頭の中をかけめぐっている。
ねぇ、ばあちゃん……。
ばあちゃんと死ぬ間際に約束したあのこと、そういえば大事な部分をちゃんと受け止めていなかった気がするよ。
『友達は作らなくてもいいけど、自分なりの思い出は作れたらいいね』と笑ったあとに、ばあちゃんは一言付け加えていたんだ。
『ひとりでいることと、孤独でいることは、意味が全然違うよ』、と。
どうしてこんなに大切な言葉を、忘れていたんだろう。
ばあちゃん、本当だね。全然違うね。
ちゃんと言いたことを理解するのに、こんなに時間がかかっちゃった。
私は意地になって、孤独になろうとしていたんだ。
私のことなんて誰も分からないと、分厚い鎧を身に纏って、独りよがりな考えばかりだった。
孤独は自分じゃ解決できないのに、誰の話も聞かずに自ら世界を狭めていた。
でももう、そんな自分はどこかに消えてしまった。
だって、瀬名先輩が、もうこんなに自分の胸の中に大きく存在しているから。
“独り”じゃない。瀬名先輩が、ここにいる。
「瀬名先輩、なんでこんなに優しくしてくれるんですか……」
堪らず問いかけると、呆れたような声が上から降ってきた。
「……お前さ、俺がどんな条件で記憶障害が起こるかちゃんと分かってんだよな」
瀬名先輩の心臓の音が、どくんどくんと耳の鼓膜を震わせる。