マップを開いて、そのカフェを目指していると、桜木は「え、本当に行くんですか」と戸惑っている様子だ。
「お前が行きたいって言ったんだろ」
「私は食べたいけど、でも、瀬名先輩は……」
「コーヒー飲むわ。寒いし」
「あ、はい……」
「あ、着いた。ここか」
そのカフェは、いかにも女子高生が好きそうな水色と白を基調とした外観で、とても男子だけでは入れなさそうな店構えだった。
「ご、ごめんなさい、入りづらかったら全然大丈夫ですので……」
「なんで? いいよ」
桜木でもこういう場所に興味があるんだな、ということに驚きながらも、なんのためらいもなくドアに手をかけると、彼女は目を丸くしていた。
そんなに意外な行動だったのだろうか。
店に入ると、仲は予想どおり女子高生とカップルであふれかえっている。
店員に案内され窓際の席まで移動すると、途中でちらちらと女子高生からの視線を感じた。
とくに気にせず席に座り、メニュー表を桜木に渡すと、彼女は顔を真っ青にしていた。
「どんな感情だそれ」
「だ、だってこんなにリア充な空間だと思ってなかったんですもん……。なんか先輩目立ってるし」
「ぐだぐだ言ってないではやく選べ」
「う、うう……。この場にいていいんでしょうか私は」
「苺食べたいんだろ」
そう問いかけると、桜木は大きくこくんと頷いた。
その素直な反応を可愛く思ったが、俺は顔に出さないように店員を呼び止めて、桜木が食べたいと言った期間限定の苺パフェを頼んだ。
桜木は耳にかけていた髪の毛をさっと下ろしてうつむき、この店の空気と化そうとしている。もう慣れているので何も言わなかったが、逆にその行動の方が目立つと何度言ったらわかるのだろうか。
「な、なんか緊張してきました……。ト、トイレ行ってきます」
「幽霊と間違われんなよ」
「たしかに……。気を付けます」
俺の冗談を真剣に受け止めて、桜木は俯いたまますごすごとトイレに向かっていく。
俺は、先に届いたコーヒーを飲みながら、白い窓枠越しに、景色をぼうっと眺めていた。
そういえば、桜木と外で出会ったのはあの遊園地以来だろうか。
もう、記憶がかなり薄れかけているが、SNSでの記録を読み返しては、なんとか記憶を繋ぎとめている。
桜木は、俺の記憶がたまに飛んでいることに気づいているだろうか……。
「お前が行きたいって言ったんだろ」
「私は食べたいけど、でも、瀬名先輩は……」
「コーヒー飲むわ。寒いし」
「あ、はい……」
「あ、着いた。ここか」
そのカフェは、いかにも女子高生が好きそうな水色と白を基調とした外観で、とても男子だけでは入れなさそうな店構えだった。
「ご、ごめんなさい、入りづらかったら全然大丈夫ですので……」
「なんで? いいよ」
桜木でもこういう場所に興味があるんだな、ということに驚きながらも、なんのためらいもなくドアに手をかけると、彼女は目を丸くしていた。
そんなに意外な行動だったのだろうか。
店に入ると、仲は予想どおり女子高生とカップルであふれかえっている。
店員に案内され窓際の席まで移動すると、途中でちらちらと女子高生からの視線を感じた。
とくに気にせず席に座り、メニュー表を桜木に渡すと、彼女は顔を真っ青にしていた。
「どんな感情だそれ」
「だ、だってこんなにリア充な空間だと思ってなかったんですもん……。なんか先輩目立ってるし」
「ぐだぐだ言ってないではやく選べ」
「う、うう……。この場にいていいんでしょうか私は」
「苺食べたいんだろ」
そう問いかけると、桜木は大きくこくんと頷いた。
その素直な反応を可愛く思ったが、俺は顔に出さないように店員を呼び止めて、桜木が食べたいと言った期間限定の苺パフェを頼んだ。
桜木は耳にかけていた髪の毛をさっと下ろしてうつむき、この店の空気と化そうとしている。もう慣れているので何も言わなかったが、逆にその行動の方が目立つと何度言ったらわかるのだろうか。
「な、なんか緊張してきました……。ト、トイレ行ってきます」
「幽霊と間違われんなよ」
「たしかに……。気を付けます」
俺の冗談を真剣に受け止めて、桜木は俯いたまますごすごとトイレに向かっていく。
俺は、先に届いたコーヒーを飲みながら、白い窓枠越しに、景色をぼうっと眺めていた。
そういえば、桜木と外で出会ったのはあの遊園地以来だろうか。
もう、記憶がかなり薄れかけているが、SNSでの記録を読み返しては、なんとか記憶を繋ぎとめている。
桜木は、俺の記憶がたまに飛んでいることに気づいているだろうか……。