……悪いのは、性格がやっかいな自分自身だ。
 私は机に向き直ると、パソコンのすぐ横に飾っているばあちゃんの写真を指で撫でた。
 ばあちゃん、私はまだ、未来のことなんて何も考えられないよ。
 誰かが決めてくれたら楽なのにとさえ思うよ。
 私はそのまま机に突っ伏して、ゆっくりと目を閉じた。
 母親に進路を聞かれたせいだろうか。
 中学時代の思い出が、昨日のことのようにまぶたの裏に浮かんできて、私はそのまま夢の中に落ちていった。



 イジメられるようになった理由は、正直よく分かっていない。
 だから、自分で改善しようと思えるほどの、具体的な策も思い浮かばなくて、気づいたらひとりぼっちになっていた。
「ただいま、ばあちゃん」
「おかえり、今日は遅かったね」
「うん、ちょっと友達と遊んできたから」
 家に着くと、ちょうどばあちゃんがリビングから出てきたところで、玄関前で鉢合わせた。
 ばあちゃんの髪は、白髪だけれどふさふさで、今日もお気に入りだと言う緑のセーターを着ていた。
 口を尖らせながら「今日も寒かったー」とぼやいて、コートを脱ぎながら家の中にあがる。
 本当は、イジメられていることがバレないように、誰もいない公園で本を読んで、ただただ時間を潰していただけなのだけど。
「今日は誰と遊んできたんだい?」
「あ……、えっと」
 名前を聞かれて、思わず言葉に詰まる。
 私はクラスメイトの名前を頭の中でフル回転させて、テキトーに答えようとした。
 けれど、ばあちゃんは何かを察したように、笑って流した。
「名前聞いても、ばあちゃん忘れっぽいから分からんね」
「……そ、そうだよ。言ってもばあちゃんには分かんないと思う」
 危なかった……。
 私は心臓をドキドキさせながら、作り笑いを浮かべる。
 公園で冷え切った指をストーブの前で温めながら、ばあちゃんに表情を読み取られないように俯いていると、優しく声をかけられた。
「夕飯まで時間あるから、今日もあれ食べるかい?」
「えっ、いいの? もしかしてマシュマロ?」
 父も母もいつも帰りが遅いが、夕飯だけは一緒に食べるというルールがある。
 お腹を空かせていた私は、いつもこうやってばあちゃんとおやつを食べるのが楽しみだったりした。
 端にマシュマロを刺してストーブで炙るのはここ最近の定番だ。