「スマホでかざせば分かんだろ」
目の前にいたのは、呼び出していた桜木だった。
彼女と会うのは遊園地で抱き締めた以来だったので、少し気恥しかったが、そんな感情も吹き飛ぶくらいの登場の仕方だ。
「今日の記憶のリハビリはなんですか?」
「ああ、そうそう。今日は電気つけなくていい。暗いほうが見えやすいから」
俺はテレビの前にあるプロジェクターと、自分のスマホをコードで繋ぎ、スマホから動画を流した。
何をやろうとしているのか察した桜木は、珍しく目をキラキラと輝かせて「もしかして、教室映画館ですか」と問いかけてきた。
不意打ちで明るい表情を見せられた俺は、一瞬動きが止まってしまった。
……驚いた。こんな表情もするのか。もしかして、映画も好きなのだろうか。
「いつかこうやって大画面で、好きな古い映画観てみたいと思ってたんです」
「お前が好きな映画かどうかは知らんけどな」
「た、たしかに……。なに流すんですか?」
「ホラー映画」
「え……」
「耳塞いだり、目閉じたりしたらノートのことバラすからな」
さっきのはしゃぎようから一転して、今度は顔を青ざめさせている桜木。
こんなにからかいようがあると、次々にイジメたくなるな。
俺は、お気に入りのホラー映画監督の最新作を再生すると、テレビの前にあぐらを掻いて座った。桜木は俺の隣で立ったまま固まっている。
「私……、本当に無理です。怖いの苦手なんです。本当に」
「大丈夫、全然怖くねぇからこれ」
「怖いの好きな人が言っても説得力ゼロなんですよ!」
「うるせぇな。はやく座れって」
桜木の腕を無理やり引っ張って座らせると、彼女はバランスを崩して俺の膝の上に倒れ込んだ。
桜木は慌てて立ち上がろうとしたが、俺は彼女の頭を胸に押さえつける。
……ほとんど何も考えずに、体が動いてしまった。
桜木のことになると、頭より先に体が動くのはなんでだ。
俺は戸惑う彼女を抱き寄せながら、つぶやいた。
「怖いならこうしてればいい」
「え……? あ、あの……」
「ほら、始まんぞ」
不気味に響くヴァイオリンの音楽とともに、ホラー映画が始まった。
青白い光が、性格も何もかも正反対な俺たちを照らしていく。
桜木は俺の行動に驚き硬直しながらも、怖いシーンが来るたびに俺の服をギュッと掴んだ。
目の前にいたのは、呼び出していた桜木だった。
彼女と会うのは遊園地で抱き締めた以来だったので、少し気恥しかったが、そんな感情も吹き飛ぶくらいの登場の仕方だ。
「今日の記憶のリハビリはなんですか?」
「ああ、そうそう。今日は電気つけなくていい。暗いほうが見えやすいから」
俺はテレビの前にあるプロジェクターと、自分のスマホをコードで繋ぎ、スマホから動画を流した。
何をやろうとしているのか察した桜木は、珍しく目をキラキラと輝かせて「もしかして、教室映画館ですか」と問いかけてきた。
不意打ちで明るい表情を見せられた俺は、一瞬動きが止まってしまった。
……驚いた。こんな表情もするのか。もしかして、映画も好きなのだろうか。
「いつかこうやって大画面で、好きな古い映画観てみたいと思ってたんです」
「お前が好きな映画かどうかは知らんけどな」
「た、たしかに……。なに流すんですか?」
「ホラー映画」
「え……」
「耳塞いだり、目閉じたりしたらノートのことバラすからな」
さっきのはしゃぎようから一転して、今度は顔を青ざめさせている桜木。
こんなにからかいようがあると、次々にイジメたくなるな。
俺は、お気に入りのホラー映画監督の最新作を再生すると、テレビの前にあぐらを掻いて座った。桜木は俺の隣で立ったまま固まっている。
「私……、本当に無理です。怖いの苦手なんです。本当に」
「大丈夫、全然怖くねぇからこれ」
「怖いの好きな人が言っても説得力ゼロなんですよ!」
「うるせぇな。はやく座れって」
桜木の腕を無理やり引っ張って座らせると、彼女はバランスを崩して俺の膝の上に倒れ込んだ。
桜木は慌てて立ち上がろうとしたが、俺は彼女の頭を胸に押さえつける。
……ほとんど何も考えずに、体が動いてしまった。
桜木のことになると、頭より先に体が動くのはなんでだ。
俺は戸惑う彼女を抱き寄せながら、つぶやいた。
「怖いならこうしてればいい」
「え……? あ、あの……」
「ほら、始まんぞ」
不気味に響くヴァイオリンの音楽とともに、ホラー映画が始まった。
青白い光が、性格も何もかも正反対な俺たちを照らしていく。
桜木は俺の行動に驚き硬直しながらも、怖いシーンが来るたびに俺の服をギュッと掴んだ。