「え⁉ 琴音にもきてないの? 私はただ無視されてるだけだと思ってたけど、まさか琴音にも連絡がないなんて……」
「ひとり暮らしでバタバタしてるのか、なんて……」
「もう七月だよ? 四か月もバタバタする? ないでしょ」
 バッサリと言い切る村主さんの言葉に、私はぐさっと心臓を槍で刺されたような気持になった。
 自分でも分かっていたことだけれど、あらためて言われるとツラい。
 何も言えないまま落ち込んでいる私に、村主さんはあっけらかんとこう言ってのけた。
「会いに行きなよ。ちょっと忘れてるだけだよ。顔見れば思い出すって」
「え……」
「何その顔。まさかこのまま諦めようとしてたわけ?」
「いや、そうじゃないけど……、そっか」
 ただ、毎日不安になるばかりで、どうしたらいいのか分からないでいたから。
 まさかそんなことを提案されるなんて、思ってもみなかった。
「そっか……、会いに行ってみればいいのかな……」
「お金なかったら私が貸してあげるし」
「だ、大丈夫! 友達いなくてお小遣いたまってるから……」
「何それ、ウケる」
 でも、一度もそんな遠出をしたことがないし、東京なんてひとりで行けるだろうか。
 不安に思っていると、村主さんが何かを察したのか「一緒に行こうか」と言ってくれた。
「え! 本当に……いいの」
 目を輝かせて言う私に、村主さんは何が面白かったのか、笑っている。
「今週土曜行こう。私もちょうど東京で服買いたかったし」
「村主さん……、ありがとう」
 ぺこっと頭をさげると、村主さんは「固すぎ」と再び私の背中を叩いてから、席を立った。
 村主さんがいてくれてよかった。
 私は心からそう思っていた。
 どうしてこんなに優しくしてくれるのかと、戸惑う部分もあるけれど、私は心から彼女に感謝した。
 会いに行こう。どんな結果が待っていたとしても、何もせずに動かないままではいられない。
 だって、先輩はあの日言ったんだ。
『"忘れた"ことは"大切だから"だって、分かってくれるか』と……。
 先輩だけじゃどうしようもないことなら、私が動かないとダメだ。
 ショックを受けてくよくよしていただけの自分が、恥ずかしくなってくる。
 会いに行くよ、瀬名先輩。
 だからどうか、私のことを思い出して。