「違うって。奏多が忙しくてお前を構えないってときに、お前だけうちに遊びにくんの。俺
がいっぱい遊んでやるからさ。お前、バイク乗ったことないだろ? 俺の愛車にタンデムさ
せてやるよ。一緒に海にツーリング行って、かわいい女の子ナンパしようぜ。そのルックス
なら女の子入れ食いだろ」
「よくわかんないけど面白そう! 飛鳥と一緒にツーリングする! 入れ食いする!」

 わははっと揃って陽気な笑い声をあげる飛鳥さんとドルーに、俺は一抹の不安を覚えずに
はいられない。飛鳥さんの協力はありがたいけど、なんかよくない遊びも教えられそうな…
…。

「飛鳥さん、ほどほどでお願いします。ドルーは犬なんで、そこんとこ忘れないように」

 心配そうな俺を、飛鳥さんは「過保護だなあ、奏多ママは!」なんて笑い飛ばす。ママっ
て……ひどくない?

「大丈夫だよ。ドルーがお前の大事な愛犬だってことは十分承知してるから。危ないことは
しないって。飲みにいけないのはちと残念だけど」

 そう言って飛鳥さんは白い歯を見せてニカッと笑った。俺は「よろしくお願いします」と
軽く頭を下げる。隣でドルーも俺の真似をして、「よろしくお願いします」と頭を下げた。

 陽気な雰囲気漂う部屋の窓の外では、もう秋の虫の声が聞こえる。
 色々なことがあった夏は、俺とドルーにたくさんの思い出と新しい協力者を与えて、もう
すぐ終わろうとしていた。