こうして俺とドルーの一緒に暮らす毎日が再び始まった。
以前と違うのは、お互いを思いやるようになったこと。それから、ちゃんと言葉にして伝
え合うようになったことだ。せっかくドルーとは会話が出来るんだもんな、話し合わなくち
ゃもったいない。
たとえば、仕事で疲れているとき、朝の支度で忙しいとき、なにが出来るかをちゃんと伝
える。ブラッシング、ナデナデ、添い寝、おやつ、ボール遊び三回まで……とか。ドルーは
そこからしてもらいたいことを選ぶ。どうしてもして欲しいことは、休みの日にする。俺は
それを最優先で叶える。約束したからにはなにがあっても破らない。というか、守れそうに
ないことは安易に約束しない。これで何度ドルーを落胆させたことか。
それから、ドルーに人間としての振舞い方を少しずつ学ばせることにした。今は人間にな
ったところで中身はてんで犬のままなので、とてもひとりにはしておけないけれど、ドルー
が人型になったときにもっと人間らしく振舞えれば、行動範囲がグッと広げられる。
そうすれば俺と一緒にスタジオまで行って、撮影が終わるまで近くのファミレスや公園で
時間を潰して待つ……なんてことも、できるようになるかもしれない。
というわけで最近は時間があればドルーを人間にさせて、外に出るようにしていた。
――しかし。それがまさか、あんな事態になるなんて。
それは、俺のドラマ撮影も残すところあと半月となった頃。
今日も深夜どころか午前二時を過ぎて帰宅した俺は、玄関を開けるなり聞こえてきた笑い
声にギョッとした。テレビとは明らかに違う、会話交じりの笑い声だ。
「靴……? 飛鳥さん、今夜泊まっていくんだっけ?」
玄関に俺のものではないスニーカーを見つけ、小首を傾げる。舞台の仕事が多い飛鳥さん
は、うちの方が稽古場に近いという理由で時々泊まりに来ることがある。ドルーの散歩のこ
ともあって合鍵も渡してあるし、勝手にうちに泊まりにくるのは構わないんだけど……もう