――翌日。
 午前中に退院したドルーは、一日ぶりに我が家に帰ってきた。
 いつもほどではないけれど、だいぶ元気も戻ってきたみたいで安心する。

「絶食後だから、お腹に優しいものから食べてくださいってさ。なにがいい? ドッグフー
ドをお湯でふやかしたのとか、キャベツとかリンゴとか」
「全部がいい」
「ははっ、りょーかい」

 食欲はすっかり全快したドルーのために、俺はキッチンに立って朝食を作ることにした。
キャベツと鶏ささみを細かく刻んで煮込んだスープを、ドッグフードにかけてふやかす。デ
ザートにはすりおろしたリンゴを少し。
 作りながら、そういえばドルーのご飯を手作りしてやるのも久しぶりだと気がつく。忙し
くなってからまともにキッチンに立っていなかった。自分の食事さえままならなかったもん
な。

「食生活の乱れは心の乱れって言うもんなー。……言わないっけ?」

 そんなことを独り言ちつつ、ドルーのご飯と自分用のご飯をトレーに載せてリビングへ運
ぶ。ちなみに俺のメニューはドルーと同じキャベツのスープにコンソメ味を足したものとパ
ン。それからリンゴ。ほぼ同じだ。

「できたよ。一緒に食べよ」

 声をかけると、尻尾を振ってドルーがやって来た。「いただきます」と手を合わせると、
ドルーもちゃんと「いただきます」と言ってからご飯を食べ始める。

「おいしい! やっぱりカナタのご飯が一番おいしい!」
「うん、俺も久々にご飯がうまい。やっぱドルーと一緒に食べるとおいしい気がするな」

 温かいスープを口に運んで、しみじみと思った。大切な相手と食べるご飯って、本当にお
いしい。心まで元気になっていく。どうしてこんなに大切なことを忘れてしまっていたんだ
ろう。

「ドルー、ご飯終わったら仕事行くまで時間あるからブラッシングしようか。ボール遊びで
もいいけど」

 デザートのリンゴを齧りながら聞けば、ドルーは目を輝かせてブンブンと尻尾を振った。
よっぽど嬉しかったのか、テンションが上がって前脚をピョンピョン跳ねさせる。

「ブラシ! ブラシ!」