子供ってすごいな、と、一発撮りでOKが出た瞬間に満面の笑みでハイタッチした琥太
郎くんと藍くんを見て思う。仲直りをした直後からすぐに仲良しに戻れる素直さも、憂いを
乗り越えるたびに見せる目を見張るような成長も、羨ましい限りだ。

 おかげで晴れ待ちの時間があったにも関わらず、校庭での撮影は予定より二十分も早く終
わることができた。次はスタジオに移動しての大人だけの撮影になるが、俺の出番までは一
時間半ほど余裕がある。幸い方角的に学校からスタジオに行く間に俺の住む町があるかたち
なので、移動の途中にちょっと病院に寄るだけならば、十分出番までに間に合うだろう。
 今日は四谷さんの運転で移動しているので彼に事情を話し頼み込むと、「仕方ないな」と
OKしてくれた。

 撮影チームがいったん解散し、四谷さんの車に乗り込もうとした俺に、藍くんと琥太郎く
んが駆け寄ってきた。

「奏多くん、今まで撮影遅らせちゃってごめんね! 友達のお見舞い行くんでしょ、これ僕
からお見舞い。渡してあげて!」

 そう言って琥太郎くんが差し出したのは、小さな袋に入ったステージバトラーのキャラス
トラップだ。人気キャラのスペシャルバージョン、結構レアじゃないのかな。

「俺からもお見舞い、はいこれ。友達、早く元気になるといいね」

 藍くんが俺の手に渡したのは、缶に入ったキャンディーの詰め合わせだった。カラフルで
ポップなキャンディーの詰め合わせは、見ているだけで楽しい。

「ふたりとも、どうもありがとう」

 車に乗った俺を、ふたりは手を振って見送ってくれた。優しくて、たくましい子たちだ。
俺も負けちゃいられないな、なんて思ったりする。

「友達のお見舞いって……ドルーだろう? お前、あの子たちに飼い犬だって言ってないの
か?」

 俺の手の中にあるストラップとキャンディー缶を横目で見て、四谷さんが不思議そうに尋
ねた。

「細かいことはいーんですよ。犬だろうがなんだろうが友達には変わりないんだから。それ
に、お見舞いは気持ちがこもってればそれで満点じゃないですか」
「なに言ってるんだ、お前。着くまで少し寝とけ」

 自信満々に答えると、四谷さんは怪訝そうな顔をしてアイマスク代わりのタオルを俺に投
げてよこした。
 お言葉に甘え、助手席を少し倒してタオルを目にかけて仮眠の体勢に入る。ラジオに合わ
せられたカーオーディオからは、夏の終わりを謳う曲が小さく流れていた。