「かわいいカナタと一緒に歩くのはすごく嬉しい。だから、これもデートか?」
「いや、これはデートじゃないだろ……」
「なんで? 宮乃と歩くのはデートで、カナタと歩くのはなんで違うんだ?」
「なんでって、デートってのは好きな相手とするもので……」
「カナタのこと大好きだが?」
歩きながら、俺は考えこむ。ドルーに恋愛感情とそれ以外の愛情の違いを、どう説明すれ
ばいいものかと。
桜舞い散る、季節は春。換毛期の季節、そして恋の季節。
いつかドルーも誰かに恋をすれば、〝好き〟の気持ちにいくつもの形があることを知るの
だろうか。そんな彼の成長を見てみたい気持ちと、形は違えどドルーの〝一番好き〟が俺で
はなくなる寂しさが、胸の中でソワソワと同居する。
ひらひらと舞い落ちてきた桜の花びらが、ドルーの形のいい鼻の先にくっついた。それを
指でつまんで取ってやると、ドルーはくすぐったそうに笑った。
「俺もドルーが一番かわいいし、大好きだよ」
そう告げた俺を大喜びでぎゅっと抱きしめてきたドルーの体は、春の陽気よりも温かくて、
心地よかった。