「私のことも好きになってほしいなあ。ね、ドルーさん。私と付き合お? 天澤くんもきっ
と、私たちがくっつけばいいと思ってるよ。だから今日のデート、セッティングしてくれた
んだろうし。ね? 私たちがくっつけばみんなハッピーだよ」
なんて強引なアプローチだと耳をそばだてて驚いていると、ドルーの「違う」というきっ
ぱりとした声が聞こえた。
「宮乃が好きなのは、オレじゃない。宮乃が好きなのは、京介。本当に好きな人と一緒にい
なくちゃ、宮乃、ハッピーになれない」
そう言って、ドルーはポケットから取り出したペアリングを水町さんの手に握らせた。水
町さんはさっきまでの甘えた表情を消し、目を見開いている。
「……どうして……京介さんのこと知ってるの……?」
水町さんの声が震えている。マスクをずらした口もとは、なにかをあざ笑うように不自然
に歪んでいた。
「京介の友達が教えてくれた。京介、宮乃が家に来なくなってからずっと元気がないって。
俺にはちっともわからない。宮乃も京介も好き同士なのに、どうして一緒にいないんだ?」
ドルーの言葉を、水町さんは呆然とした様子で聞いていた。やがて怒りの形相になったか
と思うと眉尻を下げ、泣き出しそうな笑みを浮かべて、ドルーの胸をドンと叩いた。
「ドルーさんって案外無神経だね。それとも、ドルーさんの国ではそれが普通なの? いい
年した大人が〝好き〟だけでくっつけるわけないじゃん。簡単じゃないんだよ、恋愛って。
人にはそれぞれ事情があるの、そんなこともわかんない?」
「わからない。オレは臆病じゃないから。なにがあっても好きな人から逃げたりしない」
「……っ、なんにも知らないくせに! 私は逃げたんじゃない! あの人のためを思って離
れたの!」
声を荒げて、水町さんは立ち上がった。そばを通る人が「あれって水町宮乃じゃない?」
とヒソヒソ話しているが、ドルーを強く見据えている彼女の目には入っていない。
「私はそばにいたかった! いるつもりだった! 今の仕事をやめて、彼の目の代わりにな
る生活になったってかまわなかった! でも――全部拒まれた……! 私がそばにいるこ
とが苦しいんだって! 私がそばにいると自分が情けなく思えて死にたくなるんだって!
私は……あの人を苦しめるだけの存在なんだって……! そんなこと言われたら……離れるしかないじゃん……」
と、私たちがくっつけばいいと思ってるよ。だから今日のデート、セッティングしてくれた
んだろうし。ね? 私たちがくっつけばみんなハッピーだよ」
なんて強引なアプローチだと耳をそばだてて驚いていると、ドルーの「違う」というきっ
ぱりとした声が聞こえた。
「宮乃が好きなのは、オレじゃない。宮乃が好きなのは、京介。本当に好きな人と一緒にい
なくちゃ、宮乃、ハッピーになれない」
そう言って、ドルーはポケットから取り出したペアリングを水町さんの手に握らせた。水
町さんはさっきまでの甘えた表情を消し、目を見開いている。
「……どうして……京介さんのこと知ってるの……?」
水町さんの声が震えている。マスクをずらした口もとは、なにかをあざ笑うように不自然
に歪んでいた。
「京介の友達が教えてくれた。京介、宮乃が家に来なくなってからずっと元気がないって。
俺にはちっともわからない。宮乃も京介も好き同士なのに、どうして一緒にいないんだ?」
ドルーの言葉を、水町さんは呆然とした様子で聞いていた。やがて怒りの形相になったか
と思うと眉尻を下げ、泣き出しそうな笑みを浮かべて、ドルーの胸をドンと叩いた。
「ドルーさんって案外無神経だね。それとも、ドルーさんの国ではそれが普通なの? いい
年した大人が〝好き〟だけでくっつけるわけないじゃん。簡単じゃないんだよ、恋愛って。
人にはそれぞれ事情があるの、そんなこともわかんない?」
「わからない。オレは臆病じゃないから。なにがあっても好きな人から逃げたりしない」
「……っ、なんにも知らないくせに! 私は逃げたんじゃない! あの人のためを思って離
れたの!」
声を荒げて、水町さんは立ち上がった。そばを通る人が「あれって水町宮乃じゃない?」
とヒソヒソ話しているが、ドルーを強く見据えている彼女の目には入っていない。
「私はそばにいたかった! いるつもりだった! 今の仕事をやめて、彼の目の代わりにな
る生活になったってかまわなかった! でも――全部拒まれた……! 私がそばにいるこ
とが苦しいんだって! 私がそばにいると自分が情けなく思えて死にたくなるんだって!
私は……あの人を苦しめるだけの存在なんだって……! そんなこと言われたら……離れるしかないじゃん……」