ェンディにうつすといけないので行けないと、蓮美さんに連絡した。もちろんドルーの風邪
はウソだ。あいつは家でピンピンしてる。
じゃあなんでそんなウソをついたかというと、宗方さん宅に潜入して京介さんとふたりで
話をするためである。ドッグランでも京介さんに会えることは会えるが、蓮美さんが常にい
ることもあって、深い話は聞きだしにくい。
俺が『蓮美さんのガレット・ブルトンヌ食べたかったので残念です』とメッセージに付け
加えると、蓮美さんは『よかったらうちに食べに来ない?』と自宅に招いてくれた。日頃、
彼女のお菓子を褒めたたえてきた甲斐があった。
そしてまんまとお宅訪問にこぎつけた俺は、リビングに入り、ソファーに座っていた京介
さんの姿を見つけて内心「よし!」と大きく頷く。
「こんにちは、京介さん。天澤です。今日は図々しくお邪魔しちゃってすみません」
「ああ、いらっしゃい。こちらこそ、母が強引にすみません」
俺が挨拶をすると、京介さんは耳に嵌めていたイヤホンを慌てて外した。パソコンで何か
を聞いていたみたいだ。
蓮美さんに適当に座るよう促された俺は、席に着く前に持ってきた手土産の紙袋を彼女に
差し出した。
「これ、よかったら。イギリスブランドのセイロンティーなんですけど、今日のお菓子に合
うと思って」
「あら、気を遣わなくていいのに。でも嬉しいわ、ありがとう。さっそく淹れるわね」
「クラレットティーにするとおいしいリーフなんだそうです。店員さんに聞きました」
「クラレットティー! 素敵ねえ、確かに今日のお菓子に合いそうだわ。あら、でも……今
うち、ワインがないわ」
蓮美さんが頬に手をあてて悩む。クラレットティーはオレンジ果汁と赤ワインを加えたフ
レーバーティーだ。赤ワインがなければ話にならない。
「すみません、一緒に買ってくればよかったですね。あ、じゃあ俺、今から買ってきます。
ちょっと待っててください」
「やだ、お客様に買いに行かせるわけにいかないわよ。奏多くんは座ってて、私ちょっと買
いに行ってくるから。京介! 奏多くんのお相手お願いね」
蓮美さんがバタバタと車の鍵を取りに行ったのを見て、俺は二回目の「よし!」を心の中
で叫ぶ。すべては計画通りだ。
オレンジを使ったクラレットティーを提案すれば、蓮美さんなら絶対に今日のオレンジの
はウソだ。あいつは家でピンピンしてる。
じゃあなんでそんなウソをついたかというと、宗方さん宅に潜入して京介さんとふたりで
話をするためである。ドッグランでも京介さんに会えることは会えるが、蓮美さんが常にい
ることもあって、深い話は聞きだしにくい。
俺が『蓮美さんのガレット・ブルトンヌ食べたかったので残念です』とメッセージに付け
加えると、蓮美さんは『よかったらうちに食べに来ない?』と自宅に招いてくれた。日頃、
彼女のお菓子を褒めたたえてきた甲斐があった。
そしてまんまとお宅訪問にこぎつけた俺は、リビングに入り、ソファーに座っていた京介
さんの姿を見つけて内心「よし!」と大きく頷く。
「こんにちは、京介さん。天澤です。今日は図々しくお邪魔しちゃってすみません」
「ああ、いらっしゃい。こちらこそ、母が強引にすみません」
俺が挨拶をすると、京介さんは耳に嵌めていたイヤホンを慌てて外した。パソコンで何か
を聞いていたみたいだ。
蓮美さんに適当に座るよう促された俺は、席に着く前に持ってきた手土産の紙袋を彼女に
差し出した。
「これ、よかったら。イギリスブランドのセイロンティーなんですけど、今日のお菓子に合
うと思って」
「あら、気を遣わなくていいのに。でも嬉しいわ、ありがとう。さっそく淹れるわね」
「クラレットティーにするとおいしいリーフなんだそうです。店員さんに聞きました」
「クラレットティー! 素敵ねえ、確かに今日のお菓子に合いそうだわ。あら、でも……今
うち、ワインがないわ」
蓮美さんが頬に手をあてて悩む。クラレットティーはオレンジ果汁と赤ワインを加えたフ
レーバーティーだ。赤ワインがなければ話にならない。
「すみません、一緒に買ってくればよかったですね。あ、じゃあ俺、今から買ってきます。
ちょっと待っててください」
「やだ、お客様に買いに行かせるわけにいかないわよ。奏多くんは座ってて、私ちょっと買
いに行ってくるから。京介! 奏多くんのお相手お願いね」
蓮美さんがバタバタと車の鍵を取りに行ったのを見て、俺は二回目の「よし!」を心の中
で叫ぶ。すべては計画通りだ。
オレンジを使ったクラレットティーを提案すれば、蓮美さんなら絶対に今日のオレンジの