「ウェンディ、宮乃の匂い知ってた。何回も京介のおうちに来たって。でも、宮乃がくると
京介がうんと悲しそうにするんだって。ウェンディ、お利口だから少しだけ人間の言葉わか
る。京介、宮乃に『もう来ないでくれ』って何回も言ってたって。宮乃、いっぱい泣いてた
って。京介も宮乃が帰った後、いっぱいいっぱい泣いてたって」
俺に一生懸命説明するドルーの口調も、どこか悲し気だ。だんだんと顔が俯いていき、い
つもはよく出ている舌も引っ込んでいる。
「寒くなった頃から、宮乃ちっとも来なくなったって。そしたら京介、泣かなくなったけど
元気なくなっちゃったって。……ウェンディ、うんと悲しそうだった。パートナーの元気が
ないと、犬は悲しい。ウェンディ、すごく可哀想……」
ついにキュ~ンと鳴いて、ドルーは床に伏せってしまった。俺は慰めるように、その背を
撫でてやる。
「カナタ……オレ、ウェンディのために京介のこと元気にしてあげたい。駄目か?」
ペットは飼い主に似るというけれど、俺のお節介が似てしまったんだろうか。それとも、
ドルーは優しいからもともと共感力も強いのだろうか。
どちらにしろ、俺もその意見には賛成だ。
「うん、そうしよう。俺たちで京介さんを元気にして、ウェンディのことも元気にしてあげ
よう」
そう言って微笑むと、俺は立ち上がってキッチンからドルーのおやつを取ってきた。これ
だけの話を聞きだしてくれたドルーに、ご褒美だ。
俺がおやつを持ってきたのを見ると、さっきまでしょんぼりしていたドルーの顔がぱぁっ
と明るくなって、思わず笑ってしまった。この単純さが犬らしいというか、ドルーらしいと
いうか。
「今日はよくがんばってくれたな。ありがとう」
手のひらに乗せたささみのガムを差し出すと、ドルーは待ってましたといわんばかりにパ
クっと咥えた。その場にすかさず伏せて、夢中でガムに歯を立てる。
俺もその場にしゃがんでドルーを眺めながら、抱えたおせっかいをどうするか考える。
ドルーの話から察するに、水町さんのペアリングの片割れは京介さんで間違いないだろう。
そしてペアリングを捨てるという水町さんの行動と、京介さんの家に彼女がこなくなったと
いうことを併せて考えれば、ふたりは別れたと思われる。
京介がうんと悲しそうにするんだって。ウェンディ、お利口だから少しだけ人間の言葉わか
る。京介、宮乃に『もう来ないでくれ』って何回も言ってたって。宮乃、いっぱい泣いてた
って。京介も宮乃が帰った後、いっぱいいっぱい泣いてたって」
俺に一生懸命説明するドルーの口調も、どこか悲し気だ。だんだんと顔が俯いていき、い
つもはよく出ている舌も引っ込んでいる。
「寒くなった頃から、宮乃ちっとも来なくなったって。そしたら京介、泣かなくなったけど
元気なくなっちゃったって。……ウェンディ、うんと悲しそうだった。パートナーの元気が
ないと、犬は悲しい。ウェンディ、すごく可哀想……」
ついにキュ~ンと鳴いて、ドルーは床に伏せってしまった。俺は慰めるように、その背を
撫でてやる。
「カナタ……オレ、ウェンディのために京介のこと元気にしてあげたい。駄目か?」
ペットは飼い主に似るというけれど、俺のお節介が似てしまったんだろうか。それとも、
ドルーは優しいからもともと共感力も強いのだろうか。
どちらにしろ、俺もその意見には賛成だ。
「うん、そうしよう。俺たちで京介さんを元気にして、ウェンディのことも元気にしてあげ
よう」
そう言って微笑むと、俺は立ち上がってキッチンからドルーのおやつを取ってきた。これ
だけの話を聞きだしてくれたドルーに、ご褒美だ。
俺がおやつを持ってきたのを見ると、さっきまでしょんぼりしていたドルーの顔がぱぁっ
と明るくなって、思わず笑ってしまった。この単純さが犬らしいというか、ドルーらしいと
いうか。
「今日はよくがんばってくれたな。ありがとう」
手のひらに乗せたささみのガムを差し出すと、ドルーは待ってましたといわんばかりにパ
クっと咥えた。その場にすかさず伏せて、夢中でガムに歯を立てる。
俺もその場にしゃがんでドルーを眺めながら、抱えたおせっかいをどうするか考える。
ドルーの話から察するに、水町さんのペアリングの片割れは京介さんで間違いないだろう。
そしてペアリングを捨てるという水町さんの行動と、京介さんの家に彼女がこなくなったと
いうことを併せて考えれば、ふたりは別れたと思われる。