寡黙な京介さんとは対照的に、蓮美さんはとっても社交的でお喋り好きだ。庭で果物を育ててはお菓子にするのが趣味で、会えばいつもこうやって手作りのおやつを食べさせてくれる。

「わ、おいしそう。じゃあお言葉に甘えて、いただきます」

 そんなやりとりを聞いていた京介さんが、「すみません、母がいつも押しつけがましくて」と、申し訳なさそうに頭を掻いた。

「いえいえ、全然。蓮美さんの育ててる果物どれもおいしいから嬉しいです。この間の柚子のクッキーもすごくおいしかったし」
「あら、そう? あれはねえ、柚子の果汁も全部使うのがコツなの。いい香りだったでしょう? 柚子はね、チーズとも相性がいいからチーズケーキにしてもおいしくて……ああ、作って持ってくればよかったわ。でももう柚子は全部とり終わっちゃったし……そうだ、金柑で作ってみようかしら、チーズケーキ。柚子に合うんだから金柑でもきっとおいしいわよねえ」

 蓮美さんの口調がどんどんなめらかになっていく。今日も彼女のマシンガントークは絶好
調だ。
 おしゃべりとお菓子作りが大好きな蓮美さんは、この手の話題になると口が止まらない。
俺も人と話をするのは大好きなので歓迎なのだけど、今日は彼女の気を引きつけるため、い
つもよりさらに相槌を打ってマシンガントークを加速させた。

「金柑のチーズケーキなんて斬新ですね。蓮美さんのお庭は柑橘類が多いんですか?」
「そうなのよ、今年こそベリーも植えようと思ってるんだけど、どうしても柑橘類育てたく
なっちゃうのよねえ。だって柑橘類だとどんなお菓子にも料理にも使えちゃうんですもの。
奏多くんはオレンジのガレット・ブルトンヌって食べたことある? 今度作ろうと思ってる
んだけど」
「食べたことないです。気になるな、どんなお菓子なんですか?」

 俺は一生懸命トークを弾ませながら、チラリとドルーの様子を見る。ドルーはフェンス沿
いを静かに歩きながら、じわじわとウェンディの方へ寄っていき、会話ができる距離まで近
づいていた。

 実は今日の目的は、ウェンディから話を聞くことだ。
 ドルーの鼻が確かなら、水町さんの指輪には宗方さんが関わっている可能性がある。けど、指輪がペアリングであることや、俺に投げ返してきた水町さんの態度を見ると、宗方さんに迂闊なことは聞けない。

 というわけでまずは、ドルーにウェンディから話を聞いてもらうことにした。ウェンディ