「すみません、外国から遊びに来てる友人で……今、俺の家に泊まってるんですけど、どう
しても日本のテレビ撮影の現場を見てみたいっていうもんだから連れてきてしまいました。
あの、絶対邪魔はさせませんので、見学させておいてもらってもいいですか?」
そう説明している間にも、スタッフたちがわらわらと集まってくる。誰もかれも、その目
はドルーに興味津々だ。
まあ、想定内というか当然の状況だと思う。そうそうお目にかかれるレベルではない高身
長の超美形外国人が突然やって来たのだ。いったい何者かと思うのはいたって普通のことだ。
電車移動中もドルーは散々注目を集めていて、マスクと眼鏡をしていたとはいえ芸能人で
ある俺の存在がまったく気づかれないほどだった。……ちょっと悔しい。
「へえ~友人。名前は? どこから来たの?」
「え。あー……名前はドルー。ロシアからです」
佐藤さんに聞かれて焦った。名前のこと考えとくの忘れていた。飼い犬と同じなんておか
しいだろうか。人間用の偽名を考えておくべきだった。
「ドルーって、天澤くんの犬と同じ名前なの?」
すかさずツッコんできたのは、今日の共演者の水町宮乃さんだ。二年前に人気アイドルグ
ループを脱退し、今はソロで活動している。年齢が近いこともあって、何度か番組で共演す
るうちに仲良くなったのはいいんだけれど、彼女にドルーのことまで話してあったのは失敗
だったか。
「あー……そう、っていうか、こいつ! こいつからもらったの、ドルーって名前! なん
か、いい名前だなーってずっと思ってて!」
友達の名前を犬につけるってどうなんだって脳内の俺がツッコむけれど、そのことについ
ては誰も言及しなかった。そんなことよりみんなドルーに興味津々だ。
「背大きいわねえ、いくつ?」
「ひゃ……百八十……八、って言ってたかな」
「すごいスタイル。お仕事はなにを? モデルかなにかやってるんですか?」
「いや……自宅警備員っていうか……あ、在宅ワーカーだってさ!」
ドルーに向けられる質問をしどろもどろになりながら俺が答えているうちに、「ドルーさん、日本語喋れないの?」と怪訝そうに尋ねられた。
俺以外の人間と喋るなと言ってあるので、ドルーは口を噤んだまんまだ。人懐っこいドルーとしてはなにか喋りたそうだけど、俺は彼の前に立ちはだかって代わりに答える。
しても日本のテレビ撮影の現場を見てみたいっていうもんだから連れてきてしまいました。
あの、絶対邪魔はさせませんので、見学させておいてもらってもいいですか?」
そう説明している間にも、スタッフたちがわらわらと集まってくる。誰もかれも、その目
はドルーに興味津々だ。
まあ、想定内というか当然の状況だと思う。そうそうお目にかかれるレベルではない高身
長の超美形外国人が突然やって来たのだ。いったい何者かと思うのはいたって普通のことだ。
電車移動中もドルーは散々注目を集めていて、マスクと眼鏡をしていたとはいえ芸能人で
ある俺の存在がまったく気づかれないほどだった。……ちょっと悔しい。
「へえ~友人。名前は? どこから来たの?」
「え。あー……名前はドルー。ロシアからです」
佐藤さんに聞かれて焦った。名前のこと考えとくの忘れていた。飼い犬と同じなんておか
しいだろうか。人間用の偽名を考えておくべきだった。
「ドルーって、天澤くんの犬と同じ名前なの?」
すかさずツッコんできたのは、今日の共演者の水町宮乃さんだ。二年前に人気アイドルグ
ループを脱退し、今はソロで活動している。年齢が近いこともあって、何度か番組で共演す
るうちに仲良くなったのはいいんだけれど、彼女にドルーのことまで話してあったのは失敗
だったか。
「あー……そう、っていうか、こいつ! こいつからもらったの、ドルーって名前! なん
か、いい名前だなーってずっと思ってて!」
友達の名前を犬につけるってどうなんだって脳内の俺がツッコむけれど、そのことについ
ては誰も言及しなかった。そんなことよりみんなドルーに興味津々だ。
「背大きいわねえ、いくつ?」
「ひゃ……百八十……八、って言ってたかな」
「すごいスタイル。お仕事はなにを? モデルかなにかやってるんですか?」
「いや……自宅警備員っていうか……あ、在宅ワーカーだってさ!」
ドルーに向けられる質問をしどろもどろになりながら俺が答えているうちに、「ドルーさん、日本語喋れないの?」と怪訝そうに尋ねられた。
俺以外の人間と喋るなと言ってあるので、ドルーは口を噤んだまんまだ。人懐っこいドルーとしてはなにか喋りたそうだけど、俺は彼の前に立ちはだかって代わりに答える。