「寝てたらドアがガチャガチャいったから、お出迎えした! そしたらカナタ寝てて、知ら
ない人がふたりでカナタのこと運んできた。でもその人たちオレのこと見て『やべえ』って
言ってカナタのこと玄関に捨てて逃げちゃったから、オレがカナタをベッドまで運んであげ
た! オレ、お利口?」
「……そのときって、お前もう人間だった?」
「うん、人間!」
俺は頭を抱え深く項垂れた。頭痛がぶり返してきた気がする。
酔い潰れた俺を家まで送ってくれたのは、飛鳥さんとおそらくロミオくんだろう。ふたり
は完璧に誤解しているはずだ。全裸に首輪姿で出迎える謎の外国人と俺が、変態チックな同
棲をしていると。
なんと言ってこの誤解をとけばいいものやらと悩んでいると、ドルーが椅子から立ち上が
って玄関へ駆けていき、リードを持って俺の前へ戻ってきた。
「はい、リード。ご飯食べたから、はやく仕事行こう!」
「え」と呻いて、俺は固まる。……現場行くの? この、中身はワンコで超絶目立つ美形と
一緒に?
「オレ、人間だから電車乗れる。スタジオも入れる。犬じゃないから、嫌いな人もいない」
ドルーは俺が昨日言ったことをしっかり覚えていた。「駄目だ」とはとても言いだしにく
い。
途中で犬に戻っちゃったらどうしようとか、この見た目で犬っぽい行動されたらどうしよ
うとか、とりあえずサイズの合った服を買いに行かないととか、心配は尽きないけれど、昨
日約束を破った後ろめたさもあって、俺は渋々と頷いた。
「いいか。外に出たら絶対に俺の言うことを守ること。知らない人についていかない、もら
った食べ物を勝手に食べない。あと、リードはいらない」
「わかった! 約束する!」
「それから、クンクンしない。キョロキョロしない。飛び跳ねない。あとは……」
クドクドと釘を刺しているうちに時間は流れ、気がつくと九時を回った時計を見て、俺は
大急ぎで自分とドルーの出かける支度を済ませた。
「おはようございまーす……」
本日は屋外ロケ。集合場所である鎌倉駅近くの駐車場に到着した俺は、すでに集まってい
たスタッフや出演者たちから一斉に注目を浴びた。
「おはよう……え、誰?」
真っ先に声をかけてきたのは、ディレクターの佐藤里穂さんだ。ただし視線は俺の後ろに
ついてきているドルーに釘づけのまま。
ない人がふたりでカナタのこと運んできた。でもその人たちオレのこと見て『やべえ』って
言ってカナタのこと玄関に捨てて逃げちゃったから、オレがカナタをベッドまで運んであげ
た! オレ、お利口?」
「……そのときって、お前もう人間だった?」
「うん、人間!」
俺は頭を抱え深く項垂れた。頭痛がぶり返してきた気がする。
酔い潰れた俺を家まで送ってくれたのは、飛鳥さんとおそらくロミオくんだろう。ふたり
は完璧に誤解しているはずだ。全裸に首輪姿で出迎える謎の外国人と俺が、変態チックな同
棲をしていると。
なんと言ってこの誤解をとけばいいものやらと悩んでいると、ドルーが椅子から立ち上が
って玄関へ駆けていき、リードを持って俺の前へ戻ってきた。
「はい、リード。ご飯食べたから、はやく仕事行こう!」
「え」と呻いて、俺は固まる。……現場行くの? この、中身はワンコで超絶目立つ美形と
一緒に?
「オレ、人間だから電車乗れる。スタジオも入れる。犬じゃないから、嫌いな人もいない」
ドルーは俺が昨日言ったことをしっかり覚えていた。「駄目だ」とはとても言いだしにく
い。
途中で犬に戻っちゃったらどうしようとか、この見た目で犬っぽい行動されたらどうしよ
うとか、とりあえずサイズの合った服を買いに行かないととか、心配は尽きないけれど、昨
日約束を破った後ろめたさもあって、俺は渋々と頷いた。
「いいか。外に出たら絶対に俺の言うことを守ること。知らない人についていかない、もら
った食べ物を勝手に食べない。あと、リードはいらない」
「わかった! 約束する!」
「それから、クンクンしない。キョロキョロしない。飛び跳ねない。あとは……」
クドクドと釘を刺しているうちに時間は流れ、気がつくと九時を回った時計を見て、俺は
大急ぎで自分とドルーの出かける支度を済ませた。
「おはようございまーす……」
本日は屋外ロケ。集合場所である鎌倉駅近くの駐車場に到着した俺は、すでに集まってい
たスタッフや出演者たちから一斉に注目を浴びた。
「おはよう……え、誰?」
真っ先に声をかけてきたのは、ディレクターの佐藤里穂さんだ。ただし視線は俺の後ろに
ついてきているドルーに釘づけのまま。