顔立ちが欧米人のそれっぽいのは、もしかしてシベリアンハスキーだからロシア系なのだ
ろうか。青い目にもがっしりとした体つきにも、どことなくシベリアンハスキーだった頃の
面影が残っている。
「お前、ずっとこのままなのかなあ……」
スプーンを口に運ぶ手を止めて、ぽつりと呟いた。
「わかんない。でも人間になれて嬉しい。人間になればカナタとずっと一緒にいられる」
「それはそうだけど……犬と人間じゃ生活が全然変わってくるし、俺だって心構えが違うっ
ていうか……」
ようやく犬との生活が慣れてきたところにこれは、なかなかに戸惑う。第一、ドルーは本
当に人間なんだろうか。人の形をしているだけで、中身は犬のままなんじゃなかろうか。起
きたときもクンクンしてたし。
そのとき、ズボンのポケットに入れていたスマホが震えた。電話の着信だ。相手は……飛
鳥さん。
「もしもし、おはようございます」
通話にすると、少し眠たそうな飛鳥さんの『おう、おはよう』という声が聞こえてきた。
『昨日お前だいぶ酔ってたみたいだからさ、ちゃんと起きられたかと思って。今日、屋外リ
ポートって言ってたろ』
「ありがとうございます。なんとか起きられました。ところで……」
飛鳥さんの気遣いに感謝しつつ昨夜のことを聞こうと口を開いたとき、同じタイミングで
『ところでさ』と向こうから切り出された。
『えーっと、昨夜お前のこと家まで送っていったときにさ、その……ちょっと驚いちゃって
さ。同居人に失礼な態度とっちゃったこと悪いなって思って……すみませんって伝えといて
くれよ、あの同居人に』
「え?」
なんだか嫌な予感がして、俺のこめかみにひとすじ汗が流れる。
『あ、俺は別に偏見とかそういうのないから! ただ昨日はちょっと驚いちゃっただけで。
ホント、別に、お前の性生活にドン引きするとかないから』
「ま、待ってください。性生活って――」
『あ、俺もそろそろ家出なくちゃだから切るわ。お幸せに』
「は!? お幸せにって、ちょっと!?」
強引に切られた電話を呆然と見つめてから、俺は青ざめた顔でドルーの方に向き直った。
「……なあ、ドルー。ゆうべ俺が帰ってきたときって……どんな状況だった?」
ドルーはリゾットの最後のひと口をペロリと食べ終えると、スプーンを置いて得意そうな
顔をして言った。
ろうか。青い目にもがっしりとした体つきにも、どことなくシベリアンハスキーだった頃の
面影が残っている。
「お前、ずっとこのままなのかなあ……」
スプーンを口に運ぶ手を止めて、ぽつりと呟いた。
「わかんない。でも人間になれて嬉しい。人間になればカナタとずっと一緒にいられる」
「それはそうだけど……犬と人間じゃ生活が全然変わってくるし、俺だって心構えが違うっ
ていうか……」
ようやく犬との生活が慣れてきたところにこれは、なかなかに戸惑う。第一、ドルーは本
当に人間なんだろうか。人の形をしているだけで、中身は犬のままなんじゃなかろうか。起
きたときもクンクンしてたし。
そのとき、ズボンのポケットに入れていたスマホが震えた。電話の着信だ。相手は……飛
鳥さん。
「もしもし、おはようございます」
通話にすると、少し眠たそうな飛鳥さんの『おう、おはよう』という声が聞こえてきた。
『昨日お前だいぶ酔ってたみたいだからさ、ちゃんと起きられたかと思って。今日、屋外リ
ポートって言ってたろ』
「ありがとうございます。なんとか起きられました。ところで……」
飛鳥さんの気遣いに感謝しつつ昨夜のことを聞こうと口を開いたとき、同じタイミングで
『ところでさ』と向こうから切り出された。
『えーっと、昨夜お前のこと家まで送っていったときにさ、その……ちょっと驚いちゃって
さ。同居人に失礼な態度とっちゃったこと悪いなって思って……すみませんって伝えといて
くれよ、あの同居人に』
「え?」
なんだか嫌な予感がして、俺のこめかみにひとすじ汗が流れる。
『あ、俺は別に偏見とかそういうのないから! ただ昨日はちょっと驚いちゃっただけで。
ホント、別に、お前の性生活にドン引きするとかないから』
「ま、待ってください。性生活って――」
『あ、俺もそろそろ家出なくちゃだから切るわ。お幸せに』
「は!? お幸せにって、ちょっと!?」
強引に切られた電話を呆然と見つめてから、俺は青ざめた顔でドルーの方に向き直った。
「……なあ、ドルー。ゆうべ俺が帰ってきたときって……どんな状況だった?」
ドルーはリゾットの最後のひと口をペロリと食べ終えると、スプーンを置いて得意そうな
顔をして言った。