俺みたいな売り出し途中の若手が、プロデューサー様の誘いを断れるわけがない。
 業界に接待はつきもの、飲みにいくのもまた仕事。
 ドルー、本当にごめんなあ!と、俺は心の中で陳謝する。連絡すらできないのがもどかし
い。今度あいつにスマホの使い方教えてみようかな。

 心の中でひたすらドルーに謝りながら、俺は飛鳥さんとロミオくんと一緒に楽屋を出てい
った。


「――ん……、頭……痛い……。気持ち悪い……」

 翌朝。俺は頭痛と吐き気のダブルコンボで最悪の目覚めを迎えた。
 ゆうべはすっかり飲みすぎた。遠矢さんに命じられるがままに飲み、ウイスキーのボトル
一本空けたところまでは覚えている。

「最悪だ……」

 俺は未だにグルグルする頭で、必死に今日のスケジュールを思い出した。
 今日は神奈川県の鎌倉市でグルメリポートの収録だから……十一時に現地入りで……四
谷さん営業でいないから自力で行かなくちゃ……しんどい。ってか、今何時だろう。

 時間を確かめようと、目を閉じたまま手探りでスマホを探す。すると、ベッドをさぐる俺
の手に、馴れない感触のなにかが触れた。
 ……なんだこれ? スベスベして、曲線があって、大きくて……人の体みたいな……。

「……えっ!?」

 寝ぼけていた頭が一気に覚めた俺は、弾かれるように上半身をガバッと起こした。そして
自分の手がさわっていた物体を凝視する。

「…………だ、だ、だ、誰……?」

 目を疑った。何回もまばたきして目をこすった。けれどソレは消えることなく、夢でも幻
でもないと俺に突きつける。
 見慣れた俺の部屋の俺のベッドで俺と寄り添うように――知らない男が寝ていた。すっぽ
んぽんで。

「~~っ!? っ、!?」

 俺は声にならない悲鳴をあげた。いや! 本当に! だって! 誰!?
 必死に昨夜の記憶を手繰り寄せるが、二軒目でウイスキーのストレートを一気飲みさせら
れたところまでしか覚えていない。あのあと俺にいったいなにが。

 バクバクとうるさく鳴る心臓を手で押さえながら、俺は寝ている男の姿をマジマジと見た。
 ……外国人……だろうか。顔立ちも肌の白さも、西欧か北欧辺りのそれだ。年齢は二十代
くらいっぽい。というか……おそろしいほどの美形だ。
 仕事がら美男美女を見る確率は高い方だと思うけれど、そんな俺が目を瞠るほど、この謎