迷惑をかけられたって、俺は大河内さんが好きだ。彼の子供にバットで殴りかかられよう
と、彼からたくさんの教えや励ましをもらったことに、変わりはない。だから俺は、大河内
さんにまた元気になってほしい。
「だから、撮影のときたくさん話してくれてすごく嬉しかったです。悩みとかいっぱい聞い
てくれて、大切なこともたくさん教えてくれて。……翔くんと澪ちゃんも、きっと同じだと
思います。いっぱい話がしたかっただけなんじゃないかな、大河内さんと」
つたない俺の言の葉は、少しでも大切な人の力になるだろうか。
それはわからないけれど、大河内さんはしばらく真剣な顔で黙った後、目尻にしわを寄せ
目を細めた。
「……そっかあ。澪と翔が俺と話がしたいなんて、考えたこともなかったな……。家族なん
だから、話し合わなくても分かり合えて当然だと思ってたよ。俺は、家族にずいぶん甘えて
たんだな……」
そして泣き笑いのような笑顔で「ありがとう、天澤。俺もお前のことが好きだよ」と言っ
た。
大河内家の事情に俺がこれ以上口を挟むことはできないけれど、父と子の思いが結ばれる
日は必ず来ると思う。だって、その優しい笑顔は紛れもなく父親のそれで、さっきよりも生
気を取り戻した瞳には、家族を再生させたいという大河内さんの強い意志が感じられたのだ
から。
「ところでお前、いつの間に犬なんか飼ってたんだ?」
大河内さんも帰りひと段落したところで、四谷さんがリビングでコートを着ながらドルー
を見て言った。
「あー、飼ったっていうか……迷子みたいで、飼い主が見つかるまで預かろうと思ってるん
です」
テーブルのカップを片付けながら答えると、四谷さんはしゃがみ込んでドルーを正面から
マジマジ見つめ、「ふーん」と首を捻った。
「大丈夫か? お前、動物飼ったことないって言ってたよな。いつまで預かるつもりか知ら
ないけど、いきなり大型犬の飼育なんて負担が大きいんじゃないか? なんだったらNPO
の愛護センターに知り合いいるから紹介してやるぞ。そこなら譲渡会もやってて新しい飼い
主も見つけてくれるし」
「NPO……って、処分はしないんですか?」
「重病とかでなければ、そこは原則としてしない」
そんな場所があるのかと、俺は目から鱗が落ちる思いだった。
と、彼からたくさんの教えや励ましをもらったことに、変わりはない。だから俺は、大河内
さんにまた元気になってほしい。
「だから、撮影のときたくさん話してくれてすごく嬉しかったです。悩みとかいっぱい聞い
てくれて、大切なこともたくさん教えてくれて。……翔くんと澪ちゃんも、きっと同じだと
思います。いっぱい話がしたかっただけなんじゃないかな、大河内さんと」
つたない俺の言の葉は、少しでも大切な人の力になるだろうか。
それはわからないけれど、大河内さんはしばらく真剣な顔で黙った後、目尻にしわを寄せ
目を細めた。
「……そっかあ。澪と翔が俺と話がしたいなんて、考えたこともなかったな……。家族なん
だから、話し合わなくても分かり合えて当然だと思ってたよ。俺は、家族にずいぶん甘えて
たんだな……」
そして泣き笑いのような笑顔で「ありがとう、天澤。俺もお前のことが好きだよ」と言っ
た。
大河内家の事情に俺がこれ以上口を挟むことはできないけれど、父と子の思いが結ばれる
日は必ず来ると思う。だって、その優しい笑顔は紛れもなく父親のそれで、さっきよりも生
気を取り戻した瞳には、家族を再生させたいという大河内さんの強い意志が感じられたのだ
から。
「ところでお前、いつの間に犬なんか飼ってたんだ?」
大河内さんも帰りひと段落したところで、四谷さんがリビングでコートを着ながらドルー
を見て言った。
「あー、飼ったっていうか……迷子みたいで、飼い主が見つかるまで預かろうと思ってるん
です」
テーブルのカップを片付けながら答えると、四谷さんはしゃがみ込んでドルーを正面から
マジマジ見つめ、「ふーん」と首を捻った。
「大丈夫か? お前、動物飼ったことないって言ってたよな。いつまで預かるつもりか知ら
ないけど、いきなり大型犬の飼育なんて負担が大きいんじゃないか? なんだったらNPO
の愛護センターに知り合いいるから紹介してやるぞ。そこなら譲渡会もやってて新しい飼い
主も見つけてくれるし」
「NPO……って、処分はしないんですか?」
「重病とかでなければ、そこは原則としてしない」
そんな場所があるのかと、俺は目から鱗が落ちる思いだった。