そうして大河内さんの車に真木さんが乗ったところを写真に撮り、不倫現場としてでっち
あげたのが、あの記事のひとつめの真相だ。
「でも、もうひとつの写真は?」
質問した俺に、澪ちゃんは眉をしかめて口を噤んだ。
どちらかというと、女子高生と寄り添っていた大河内さんの写真の方が気になる。なんせ
大河内さん本人が、身に覚えがないと言うのだから。
「あれは姉ちゃんだよ」
俺の質問に答えたのは、澪ちゃんではなく翔くんだった。
翔くんは手もとのティッシュを三枚まとめて引っ張り出し、思いっきり鼻をかんだ。さっ
き泣いたので、まだ鼻水が止まらないようだ。
そしてティッシュをゴミ箱に投げてから、赤くなってる鼻を指でこすって続きを話した。
「賭けだったんだ。もしあの写真を見て、父さんがすぐに姉ちゃんとの写真だってわかった
ら、俺たち謝ろうって。でも、父さんはあの日のこと全然覚えてなかった」
「待って、あれは澪ちゃんなの? でも学校の制服と違うって大河内さんが……」
「うちの高校、おととし他校との併合があって。そのとき制服が変わったんです」
今度の質問に答えてくれたのは、澪ちゃんだった。
「私は今三年生なんですけど、一年生のときだけあの制服を着てたんです。でも、父さんは
そんなこと覚えてなかった」
「あの写真は姉ちゃんの入学式の日の写真だよ。珍しく父さんが式に出席したんだ。それで
俺も姉ちゃんも嬉しくて写真撮りまくって……。そのときの一枚だよ、あれは」
ふたりの話を聞いて、俺はなんだか泣きたくなってしまった。
気まぐれでも、ほんの一日だけでも、父親が自分たちに関心を向けてくれた思い出の日。
けれどその思い出を宝物のように大切にしていたのは澪ちゃんと翔くんだけで、大河内さん
にとっては娘の晴れ姿だった制服すら覚えていない程度のことだったんだ。
「あの写真見ても、父さんはなんにも思い出さなかった。それどころか昨日はずっと『天澤
に迷惑かけた、悪いことした』って言ってた。バッカみてえ。ちょっと俺たちのこと思い出
せば犯人が誰かなんてすぐにわかるのに。後輩とか事務所のことしかあいつは考えてないん
だよ」
吐き捨てるように言った翔くんに、「……だから俺を襲ったんんだ?」と聞くと、澪ちゃ
んが「ごめんなさい」と頭を下げた。
あげたのが、あの記事のひとつめの真相だ。
「でも、もうひとつの写真は?」
質問した俺に、澪ちゃんは眉をしかめて口を噤んだ。
どちらかというと、女子高生と寄り添っていた大河内さんの写真の方が気になる。なんせ
大河内さん本人が、身に覚えがないと言うのだから。
「あれは姉ちゃんだよ」
俺の質問に答えたのは、澪ちゃんではなく翔くんだった。
翔くんは手もとのティッシュを三枚まとめて引っ張り出し、思いっきり鼻をかんだ。さっ
き泣いたので、まだ鼻水が止まらないようだ。
そしてティッシュをゴミ箱に投げてから、赤くなってる鼻を指でこすって続きを話した。
「賭けだったんだ。もしあの写真を見て、父さんがすぐに姉ちゃんとの写真だってわかった
ら、俺たち謝ろうって。でも、父さんはあの日のこと全然覚えてなかった」
「待って、あれは澪ちゃんなの? でも学校の制服と違うって大河内さんが……」
「うちの高校、おととし他校との併合があって。そのとき制服が変わったんです」
今度の質問に答えてくれたのは、澪ちゃんだった。
「私は今三年生なんですけど、一年生のときだけあの制服を着てたんです。でも、父さんは
そんなこと覚えてなかった」
「あの写真は姉ちゃんの入学式の日の写真だよ。珍しく父さんが式に出席したんだ。それで
俺も姉ちゃんも嬉しくて写真撮りまくって……。そのときの一枚だよ、あれは」
ふたりの話を聞いて、俺はなんだか泣きたくなってしまった。
気まぐれでも、ほんの一日だけでも、父親が自分たちに関心を向けてくれた思い出の日。
けれどその思い出を宝物のように大切にしていたのは澪ちゃんと翔くんだけで、大河内さん
にとっては娘の晴れ姿だった制服すら覚えていない程度のことだったんだ。
「あの写真見ても、父さんはなんにも思い出さなかった。それどころか昨日はずっと『天澤
に迷惑かけた、悪いことした』って言ってた。バッカみてえ。ちょっと俺たちのこと思い出
せば犯人が誰かなんてすぐにわかるのに。後輩とか事務所のことしかあいつは考えてないん
だよ」
吐き捨てるように言った翔くんに、「……だから俺を襲ったんんだ?」と聞くと、澪ちゃ
んが「ごめんなさい」と頭を下げた。