感じでもない。少なくとも、ここ一、二年に撮ったものだろう。
 それなのに心当たりがないなんて、いったいどういうことなんだ。

「あの……写真見て思ったんですけど、あれって娘さんじゃないんですか?」

 俺は最初に写真を見たときに感じたことを口に出した。
 大河内さんの娘さんのことはチラッとしか見たことがないけれど、なんとなく似ていると
思った。娘さんは高校生なので、年齢的にもぴったりだし。
 けれど大河内さんは俺の予想を「いや、制服が違う」とあっさり否定した。

「あれがいつのなんの写真かはっきりしないと、弁解の説得力がなくてな。ああ、もちろん
売春とかそういうことは一切してないからな」

 腕を組んで悩ましそうに言った大河内さんに、俺は「それはわかってます」と返した。

「それに……やっぱり犯人がはっきりしないことには、事務所もちょっと動きづらいんだよ」

 そう話を続けた大河内さんは、さらに悩ましそうに眉間のしわを深くした。俺も眉をしか
めて閉口する。
 真木さんとの写真を見たときに、俺の頭には『誰がこれを撮ったのか?』という疑問が浮
かんだ。車のアップだったのでわかりづらかったが、背景は住宅街らしかった。この近所で
撮った可能性が大きい。だとすると、写真を撮ったのは近所の住民。あるいは……あの日、
バーベキューに参加していた者……。つまり、俺を含め事務所の誰かが犯人である可能性が
否めないのだ。

 万が一、同じ事務所の誰かだったら話はややこしくなってくる。人間関係のトラブル、事
務所内の不和、先輩を陥れる芸能界の闇などなど、マスコミが面白おかしく囃し立て、事務
所全体のイメージダウンが避けられないだろう。

 というか、俺だってその〝可能性のあるひとり〟なんだよな。のこのこ大河内さんに会い
にきちゃったけど、なんだか怪しかっただろうか。
 口を噤んだ俺を見て、察した大河内さんは取り繕うように大げさに笑ってみせた。

「そんな顔すんな! 天澤のことはこれっぽっちも疑っちゃいないよ! というか、まあ、
事務所のやつらのことは誰も疑ってないよ。恩を仇で返すような馬鹿なやつは俺の後輩にい
ないって信じてる」

 ――信じてる、か。そんなふうに言いきれる大河内さんが、俺は好きだ。
 つられて笑うと、大河内さんは満足したように頷いて、目尻にしわを寄せて満面の笑みを浮かべた。