わざわざリードを買ってまで俺がドルーを連れていったのは、市内の保健所だ。迷い犬を
保護したら、保健所か警察か愛護センターってとこに連れていくものらしい。さっきスマホ
で調べた。
家から歩いて三十分のそこへドルーを連れていくと、職員の女性が対応にあたってくれた。
しかし――。
「シベリアンハスキーの行方不明情報は、出ていませんね……」
職員の人は提携している東京都の愛護センターにアクセスして、飼い犬の行方不明情報を
調べてくれたけれど、ドルーらしき犬を探している人は見つからなかった。
やっぱりドルーって迷子ではなく、捨て犬なのだろうか。……それはあまりにもかわいそ
うだ。
「えっと、でも飼い主が見つかるまでこちらで預かってもらえるんですよね?」
どちらにしろ、このまま俺のとこに置いておくわけにもいかない。
今日はたまたまオフになったけど、普段なら朝から晩まで仕事で留守だ。それにまったく
ペットを飼ったことがない俺に、いきなりこんな大きな犬の世話が出来るとは思えなかった。
とりあえず飼い主がみつかるまで預かってもらえることを期待してここへ来たわけだけ
れど、職員の人は困ったように眉尻を下げながら俺に告げた。
「一週間ほどはお預かりします。けど、それ以降も飼い主が見つからない、新たな譲渡先も
ない場合は処分となります」
「えっ!? 処分って……殺しちゃうんですか?」
ストレートに尋ねた俺に、職員の人はコクリと頷いた。
たった一週間で命が処分されるという冷酷な通達に思わず動揺したけれど、持ち込まれた
野良犬や野良猫を保健所ですべて飼い続けられるわけがないことは、少し考えれば当たり前
のことだった。
でも、だからって……ドルーが一週間後に処分されるかもしれないなんて……。
「……待ってください、あの……、ひ……引き取ります! 俺が引き取ります!」
気がついたら、俺はそう申し出ていた。
だって……ドルーを死なせたくない。あいつすごくいい子なんだ。喋れるし、素直だし、眠いのに俺の愚痴だって聞いてくれたし、それに俺のこと大好きだし……。