「うん、こんなもんかな」
鍋の中身を半分ほど平皿に移し冷ましている間に、残りの半分にコンソメと胡椒を加えて
味を整える。こっちは俺の分だ。
ドルーの皿がほどよく冷めたところで、俺は自分の分も皿に移し、その両方を持ってリビ
ングへ戻った。自分の皿はテーブルへ、ドルーの皿は新聞紙を敷いた床の上へ置く。
ドルーはよだれを溢れさせそうな勢いで「食べていい? 食べていい?」と聞いてきたけ
ど、俺がよしと言うまではお利口に手を出さずに堪えていた。
「よし、じゃあ食べよう。いただきまーす」
よしの合図で、ドルーは勢いよく皿の中身を食べ始めた。俺も湯気を立てる皿の中身をス
プーンで掬い、ハフッと頬張る。うん、我ながらうまい!
メニューは鶏ササミとカボチャの豆乳スープ。朝食にしては少々手が掛かったけれど、温
かくて優しい味で、今日みたいな寒い朝にはぴったりのメニューかもしれない。
よっぽどお腹がすいていたのかドルーは綺麗に食べ尽くすと、口の周りをペロリとひと舐
めしてからキラキラとした目をこちらへ向けた。
「おいしかった! すごくおいしかった! こんなおいしいの食べたことない!」
「はは、そりゃよかった」
「カナ、すごい! こんなにおいしいご飯くれるカナのこと、オレもっと好きになった!」
犬のご飯なんて初めて作ったけれど、どうやら好評みたいだ。
褒められた俺は気分をよくしたものの、あまりにドルーが絶賛するものだから、こいつが
普段なにを食べているのか不安になってくる。
そういえば今さら気づいたけど、ドルーって首輪をしていない。
飼い主のことが大好きで延々探し求めていたみたいだけど、その飼い主って本当にドルー
をかわいがっていたんだろうか。もしかしたら予想外に大きくなったドルーを無責任に捨て
ていってしまった可能性だって否めない。
「なあ、ドルー。昨日の話の続きだけどさ、お前の飼い主って……」
昨夜と同じ質問を繰り返すと、「オレのリーダーはカナ」と案の定同じ答えが帰ってきた
ので、俺は質問の内容を変えてみることにした。
「お前、どこから来たの? お前が住んでた家ってどの辺かわかる?」