クランクアップしてからも宣伝のためにふたりで色々な番組に出たりインタビューを受
けたりしたけれど、そのときに大河内さんが俺のことを『今ではまるで本物の息子みたいに
思っている』って言ってくれたときには嬉しかったなあ。……ちょっと照れくさかったけど。
そうして映画の公開まであと三ヶ月に迫った今日のことだった。
打ち合わせのために事務所に行った俺は、そこで真っ青な顔をしたマネージャーから信じ
られない言葉を聞いた。
『映画が公開未定になった』
なんて質の悪い冗談だと笑おうとしたけれど、事務所全体に漂う不穏な慌ただしさが、冗
談でも夢でもないと俺に突きつけていた。
発端は、昨夜投稿されたSNSの記事だという。
『大河内務は不倫しているクズ』
『大河内務は未成年売春もしている最低な人間』
そんな内容の記事がいくつかのSNSに上げられ、瞬く間に拡散されたのだ。
本来ならそんな悪口まがいの記事、誰も信じず無視されるだろう。けれど記事には写真が
ついていた。
一枚は車を運転する大河内さんと助手席に乗った女性のツーショット。もう一枚は制服姿
の女の子と寄り添って街を歩く大河内さんの後ろ姿だ。
もちろん写真の詳細がわからない以上、信憑性はない。けれど、ゴシップ好きなネット民
が食いつくには十分な餌だった。
ネット上では、この写真の男性が間違いなく大河内さんであること、そして今までどの雑
誌にも出されたことのない正真正銘のリーク写真だということまで突きとめていた。
車の助手席に乗っている女性は誰だ、同じ事務所の若手女優ではないか、寄り添っている
女の子の制服はどこの学校のものか、そもそもこれを投稿したのは誰なのか……などなど、
ネット民の探偵ごっこは大変に盛り上がり、この話題はニュースサイトにまで取り上げられ
るほどに膨らんだ。
ネットの拡散は質が悪い。週刊誌のスクープならば、事務所が伝手やお金でなんとか話を
つけることも可能だけど、相手が不特定多数のSNSではそうはいかない。
事務所は全力で対応にあたったけれどここまで広がりきってしまった話題は収拾がつか
ず、ついに映画のスポンサーから説明の要求がきたのが今朝のことだったという。
けたりしたけれど、そのときに大河内さんが俺のことを『今ではまるで本物の息子みたいに
思っている』って言ってくれたときには嬉しかったなあ。……ちょっと照れくさかったけど。
そうして映画の公開まであと三ヶ月に迫った今日のことだった。
打ち合わせのために事務所に行った俺は、そこで真っ青な顔をしたマネージャーから信じ
られない言葉を聞いた。
『映画が公開未定になった』
なんて質の悪い冗談だと笑おうとしたけれど、事務所全体に漂う不穏な慌ただしさが、冗
談でも夢でもないと俺に突きつけていた。
発端は、昨夜投稿されたSNSの記事だという。
『大河内務は不倫しているクズ』
『大河内務は未成年売春もしている最低な人間』
そんな内容の記事がいくつかのSNSに上げられ、瞬く間に拡散されたのだ。
本来ならそんな悪口まがいの記事、誰も信じず無視されるだろう。けれど記事には写真が
ついていた。
一枚は車を運転する大河内さんと助手席に乗った女性のツーショット。もう一枚は制服姿
の女の子と寄り添って街を歩く大河内さんの後ろ姿だ。
もちろん写真の詳細がわからない以上、信憑性はない。けれど、ゴシップ好きなネット民
が食いつくには十分な餌だった。
ネット上では、この写真の男性が間違いなく大河内さんであること、そして今までどの雑
誌にも出されたことのない正真正銘のリーク写真だということまで突きとめていた。
車の助手席に乗っている女性は誰だ、同じ事務所の若手女優ではないか、寄り添っている
女の子の制服はどこの学校のものか、そもそもこれを投稿したのは誰なのか……などなど、
ネット民の探偵ごっこは大変に盛り上がり、この話題はニュースサイトにまで取り上げられ
るほどに膨らんだ。
ネットの拡散は質が悪い。週刊誌のスクープならば、事務所が伝手やお金でなんとか話を
つけることも可能だけど、相手が不特定多数のSNSではそうはいかない。
事務所は全力で対応にあたったけれどここまで広がりきってしまった話題は収拾がつか
ず、ついに映画のスポンサーから説明の要求がきたのが今朝のことだったという。