スザンヌははっきりとフレッドにそう告げた。だけど、フレッド達は戸惑うスザンヌに構うことなくスザンヌと友達のトレーを持ち上げた。
「君はまだここの学園に転入してきて日が浅いから、わかっていないんだよ」
フレッドが口角を上げてスザンヌを見下ろすと、スザンヌは顔を赤くして俯いた。やっぱりスザンヌもフレッドに微笑みかけられると頬を染めるんだな、とがっかりした自分がいた。
まあ、フレッドは誰もが認めるレベルの美男子だよ。それは俺も認める。
スザンヌはトレーを持って歩き始めたフレッド達の背中を追いながらも、何かを言いたげに何度もこちらを振り返っていた。
◇ ◇ ◇
俺の通う学園では、専門科目はそれぞれの所属科に分かれて別々の教室で行われる。
その日、俺は魔術科の専門授業である魔方陣を設置の授業を受けるため、それ専用の教室に移動をしようとしていた。
渡り廊下を歩いていると、視界の端にスザンヌの姿を見つけて俺は足を止めた。スザンヌは廊下を向こうに歩いていたのに、急に方向を変えて今度はこっちに歩く。そしてまた足をとめて、辺りをキョロキョロとしだした。
「スザンヌ嬢、どうしたの?」
俺が声を掛けるとスザンヌはびっくりしたような顔をしてから頬を赤らめて恥ずかしそうに視線を泳がせた。その表情から、俺はピンときた。
「もしかして、迷子?」
スザンヌの耳まで赤くなる。
「実は、友人達と淑女科の専門授業で調理実習の部屋に行くつもりだったのですが、途中でエプロンを教室に忘れたことに気付いて、一人で取りに戻ったんです。エプロンは無事に取りに行けたのですが、今度は調理実習室がわからなくて……」
「調理実習室? 魔方陣の教室の近くだから連れて行ってあげるよ」
調理実習室は校舎の外れにある。方向も同じだし、口で説明するとまた迷子になりそうなので、俺はスザンヌを送っていくことにした。
俺の横をおずおずと歩きはじめたスザンヌの頭には蝶の髪飾りが付いていた。歩くたびにまるで飛び立つかのように羽がゆらゆら揺れていた。
「それ、ハイレ蝶だね」
「はい?」
「ハイレ蝶。南部地方によくいる蝶だよ。手のひらサイズの大きな魔法蝶で、黒い羽に紫の斑点があるのが特徴なんだ」
スザンヌは俺の説明を聞き、自分の頭にのった髪飾りを手で触れた。
「君はまだここの学園に転入してきて日が浅いから、わかっていないんだよ」
フレッドが口角を上げてスザンヌを見下ろすと、スザンヌは顔を赤くして俯いた。やっぱりスザンヌもフレッドに微笑みかけられると頬を染めるんだな、とがっかりした自分がいた。
まあ、フレッドは誰もが認めるレベルの美男子だよ。それは俺も認める。
スザンヌはトレーを持って歩き始めたフレッド達の背中を追いながらも、何かを言いたげに何度もこちらを振り返っていた。
◇ ◇ ◇
俺の通う学園では、専門科目はそれぞれの所属科に分かれて別々の教室で行われる。
その日、俺は魔術科の専門授業である魔方陣を設置の授業を受けるため、それ専用の教室に移動をしようとしていた。
渡り廊下を歩いていると、視界の端にスザンヌの姿を見つけて俺は足を止めた。スザンヌは廊下を向こうに歩いていたのに、急に方向を変えて今度はこっちに歩く。そしてまた足をとめて、辺りをキョロキョロとしだした。
「スザンヌ嬢、どうしたの?」
俺が声を掛けるとスザンヌはびっくりしたような顔をしてから頬を赤らめて恥ずかしそうに視線を泳がせた。その表情から、俺はピンときた。
「もしかして、迷子?」
スザンヌの耳まで赤くなる。
「実は、友人達と淑女科の専門授業で調理実習の部屋に行くつもりだったのですが、途中でエプロンを教室に忘れたことに気付いて、一人で取りに戻ったんです。エプロンは無事に取りに行けたのですが、今度は調理実習室がわからなくて……」
「調理実習室? 魔方陣の教室の近くだから連れて行ってあげるよ」
調理実習室は校舎の外れにある。方向も同じだし、口で説明するとまた迷子になりそうなので、俺はスザンヌを送っていくことにした。
俺の横をおずおずと歩きはじめたスザンヌの頭には蝶の髪飾りが付いていた。歩くたびにまるで飛び立つかのように羽がゆらゆら揺れていた。
「それ、ハイレ蝶だね」
「はい?」
「ハイレ蝶。南部地方によくいる蝶だよ。手のひらサイズの大きな魔法蝶で、黒い羽に紫の斑点があるのが特徴なんだ」
スザンヌは俺の説明を聞き、自分の頭にのった髪飾りを手で触れた。



