もしあの子が今この景色を見たらなんて言うだろう。そんなことを思いながら、俺はいつまでも幻想的な光景を眺めていた。
 

    ◇ ◇ ◇ 


 スザンヌにはハッキリと〝君は勘違いしている〟と教えたのだけど、それでもスザンヌは度々俺に話しかけてきた。
 美少女に話しかけられて悪い気分はしないから別にいいんだが、その情熱をフレッドに向ければすぐ付き合えそうな気はしなくもない。恋愛偏差値ゼロの俺には女の子の考えることはよくわからない。

 いつものようにお昼休みに食堂でロベルトと食事をしていたら、スザンヌが友達と席を探していた。

「ここ空いてるかな? 一緒に食べていい?」

 スザンヌの友人が俺達の隣を指さしたので、ロベルトは頷いて見せた。

「やった。じゃあ、お邪魔しまーす」

 スザンヌの友人は間延びした返事をして食事を載せたトレーをテーブルに置く。椅子をひいたスザンヌと友達が席に座ろうとしたそのとき、後ろから声がかかった。

「スザンヌ嬢。君が住んでいた外国の話に興味があるから聞かせてくれ。僕達とあっちで食べよう。イルゼ嬢も一緒に」
「え? でも私達はここで……」

 フレッドから声を掛けられたスザンヌは明らかに困惑していた。
 俺達に一緒に食べると言ってしまったので気にしているのかと思った俺は「俺らにはお構いなく」と言った。スザンヌは何故か悲しそうに目を伏せた。

「そうだよ。魔術科は変人揃いだからあまり近づかない方がいい。それに、彼らと付き合っていると君までスクールカーストの下位に見られてしまう」
「スクールカースト?」

 スザンヌは怪訝な顔をして眉を寄せた。

 スクールカーストとは言わずと知れた学園内の暗黙の位置づけだ。
 華やかな騎士科は上位寄り。地味で変人揃いの魔術科は下位寄り。文官を目指す政治学科や経済学科はその中間。
 見た目がすこぶる良いやつや運動神経や成績が抜きんでている奴は上位に行き、地味で冴えない奴は下位に行く。そんなところだ。

 つまり、見た目がよくて高位貴族出身で騎士科のフレッドはスクールカーストの頂点にいる。地味で冴えない俺は……まぁ、それはいい。

「私はそんなくだらないもの、気にしません」