この後どうなるか、予想してやろう。
 フレッドが「もちろんだよ」と甘く囁いて、数日後にはスザンヌとフレッドは付き合い始めるんだ。きっと美少女のスザンヌはフレッドの恋人格付け一位に躍り出るだろう。

「あの……、最初はお友達でもいいんです。お友達になって貰えませんか?」

 もう一度スザンヌの鈴を転がすような可愛い声がした。
 フレッドが何も答えないなんておかしいなと思って顔を上げると、何故が目の前には哀しそうな顔をして俺を見つめるスザンヌがいた。

「あなたと仲良くなりたいんです。駄目でしょうか?」
「え? 俺??」

 予想外のことにぽかんと見上げてしまった。
 近くで見るスザンヌは本当に美少女だった。猫みたいな大きな目を縁どる長いまつ毛が瞬きするたびに揺れ、陰を落とす。

「ケビンさまですよね? 私、あなたと()()お会い出来るのを楽しみにしていました。お友達からで良いので仲良くして頂けませんか?」

 スザンヌは真っ直ぐにこちらを見つめてそう言った。

 俺は頭をフル回転させて状況を把握した。横には唖然としたアホ面のフレッドとその友人達。

 彼女はフレッドに近付きたいけれど恥ずかしくて、とりあえず近くにいた俺に声をかけたのだろうか。あいにく俺は席が隣なだけで、フレッド達とは全く仲良しではないのだが。

 ()()会えるのを楽しみにしていたって言ってたな。ということは、かつて住んでいた外国で出会った別の『ケビン』と俺を勘違いしている?
 なにせ、〝石を投げればケビンに当たる〟といわれるほど世の中はケビンで溢れているからな。俺は外国には行ったことがないし、こんな美少女に会ったら忘れるはずないのでそのケビンが俺でないことは間違いない。残念ながらケビン違いだ。

 ともかくこれだけははっきりと言い切れる。

 ──彼女は何かを勘違いしている!


    ◇ ◇ ◇


「今朝、なにか面白い事があったみたいだね?」
「転校生が来た」
「ふーん、それだけ? それにしてはその転校生はこっち見てないか?」
「フレッド達を見てるんだよ」
「そうかなぁ?」

 お昼休みの頃に、ロベルトはようやく遅れて登校してきた。転校生に気付いたロベルトは視線を感じるようで、スザンヌを不思議そうに見ている。

 実は俺もこっちを見ている気がするんだが、きっと気のせいだ。