武道会の学年優勝はマークだった。そのマークも全学年対抗戦では惜しくも敗れてしまった。

「ケビンさま、今日はとってもかっこよかったです」
「ありがとう。でも、もうちょい上までいきたかったな」

 スザンヌは笑顔で俺を褒めてくれたけど、俺はちょっと残念で力なく首を振った。

 フレッドの打撃がかなり重くて第二試合が終わった時、俺の手は震え握力と腕力は限界を迎えつつあった。
 その結果、第三試合ではフレッドより遙かに弱い騎士科の学生相手だったのに、相手の剣を受け止めた時に手から自分の剣が落ちてしまい、呆気なく負けた。

 そもそも、優勝したマークは、マークとフレッドは互角かややフレッドの方が強いと言っていた。つまり、フレッドは学年一の実力があったと言うことだ。
 俺に負けて周囲に嘲笑、軽蔑の眼差しを受けたことはあいつには耐え難い屈辱だっただろう。見た目や剣の実力は確かなのだから、これに懲りて心を入れ替えてくれるといいのだが。

 俺は気を取り直すとスザンヌの手を取った。もうすぐダンスホールで舞踏会が始まる。

「そろそろ行こうか。リボンは持ってきた?」
「はい! もちろんです。リボンも蝶も持って参りましたわ」

 スザンヌは弾けるような笑顔でそう言った。

 リボンも蝶も? と俺は首をかしげる。リボンの一部で蝶々結びを事前に作ってきたのだろうか?

「付けてあげるよ。どこ?」
「こちらですわ」

 スザンヌは持っていた鞄から俺の渡した黒地にピンク色のリボンを取り出してまず俺に手渡す。そして、ガサゴソと鞄を漁って奥から小さな虫かごを取り出した。

「この虫かごは?」
「蝶ですわ。ケビンさまが髪に飾ると仰ったじゃないですか。今朝、侍女に付けて欲しいとお願いしてみたのですが、やはり無理でしたわ。みな悲鳴を上げてしまって」

 スザンヌは申し訳無さそうな顔をして眉根を寄せる。俺はなんだかとても嫌な予感がしてくるのを感じた。そっと虫かごを覗くと、黒地にオレンジ色の模様がある東部熱帯地域に良くいる種類の魔法蝶がいた。この魔法蝶はこの辺を普段飛んでいるような種類じゃない。

「私、ケビンさまの『君をイメージしました』ってメッセージにとっても感激しましたの。ケビンさま、本当に素敵な贈り物をありがとうございます」

 嬉しそうに微笑み、頬を染めて俺を見上げるスザンヌ。