リボンを贈って、それを相手が付けてきてくれれば女の子からの『私もあなたに惹かれています』という意思表示になるんだ。

 俺は人生で初めて女性用のリボンを買いに行った。
 店の前で怖じ気づくんじゃないかとびびっていたけれど、この時期は学園の男子生徒が沢山買いに来ているから思ったより抵抗なく店には潜入することができた。店の中には所狭しとリボンが並んでいた。

「沢山あり過ぎて、どれがいいのか全然わからん」
「俺、決めたよ。イルゼは赤い魔法石がお気に入りだから、この色がいいと思ってさ」

 一緒に行ったロベルトは早々にどれにするか決めたようだ。魔法石に似た少し紫ががった赤色のリボンを俺の前に広げて見てた。
 俺がスザンヌと舞踏会に出るせいでその時間、ぼっちにさせてしまうんじゃないかとの心配をよそに、ロベルトはいつの間にかイルゼと舞踏会に行く約束を取り付けていたらしい。

 リボンと言ってもシンプルなワンカラーからレース使いのものや、模様があしらわれたものなど様々だ。普段リボンなど手にすることがない俺にはどれがいいのかさっぱりだ。

 俺はもう一度店の中を一周した。そして、黒の地の中央ラインにピンクの四角が並べられたリボンに目をとめた。店内で蝶々結びされて飾られたそのリボンは柄が魔法蝶に似ている。
 スザンヌのイメージにも合う気がした。俺は少し悩み、結局そのリボンをスザンヌにプレゼントした。


「ケビンさま、素敵な魔法蝶をありがとうございます」

 リボンを贈った数日後、スザンヌは嬉しそうに俺にお礼を言ってきた。やっぱりスザンヌならあのリボンが魔法蝶をイメージしたものだって気付いてくれると思っていたんだ。
 俺はそれに気付いて貰えてすごく嬉しくなった。

「あれは学園祭の舞踏会で付けてきてね」
「学園祭の舞踏会に? どうやってつけるのですか?」

 スザンヌはコテンと首を傾げる。スザンヌは転校してきてからの初めての学園祭だということに気づいた俺は、あれは髪に飾るのだと教えてあげた。

「まあ、知りませんでした。上手く飾れるかしら? 飛んで行っちゃわないかしら?」
「大丈夫だよ。舞踏会があるダンスホールは室内だし」

 スザンヌはリボンが飛んでいくことを心配していたので俺は笑って大丈夫だと伝えた。
 テラスのドアが開いていたとしても、そこまでの強風は吹かないはずだ。