俺は自分の魔虫コレクションでも特にグロい見た目である、黒と緑と黄色の縞模様にオレンジ色のつのの生えた魔法蝶の幼虫を何匹も用意した。
これは成虫になれば黄緑色の光りを放つことを期待して試行錯誤中のものだ。それをお洒落な箱に入れて蓋を閉じ、リボンを掛けて綺麗にラッピングする。最後に、『君をイメージしました』とメッセージを添えた。
名前も知らないから『君』としか書きようがない。
俺はそれをもって親父のもとを訪れ、手渡した。
「これは何が入っているんだい?」
「良いものだよ」
「軽いね。お菓子かな?」
親父は不思議そうに箱を揺らす。中には何匹かのグロテスクな魔法蝶の幼虫と葉っぱが入っているだけなので、カサカサと軽い音がした。
「とにかく、それを先方に届けてくれ。色々と解決するはずだ」
「わかったよ。自分で届けに行かないのかい?」
俺は無言で首を振った。
ストーカー気質にメンヘラ気質を持ったヤバいやつの家なんかに届けに行ったら、監禁されかねない。俺はとにかくその問題大ありなご令嬢に関わり合いたくないんだよ。
親父は俺の顔をとその箱を見比べると、届けてくれる事を了承したようで「わかったよ」と言い、使用人を呼んだ。使用人が仰々しくそれを受け取り、部屋を去ってゆく。
正直、胸は痛む。
めちゃくちゃ痛む。
俺の名誉のために一つ言わせてくれ。
俺は普段は決してこんないじめまがいの陰湿な事をするほど落ちぶれてはいないんだ。
しかし、相手は何度断っても言葉の通じないストーカー気質に、メンヘラ気質を兼ね備えたいかれた令嬢だ。背に腹はかえられない。
ここまでぶっ飛んだ贈り物をされたら、流石の先方も俺への執着心をなくすに違いない。俺は大事にここまで育ててきた幼虫達に、心の中で深く謝罪した。
ご令嬢に謝罪? んなもん、するわけない。
◇ ◇ ◇
学園祭の最後を締めくくる舞踏会は学園のダンスホールで行われる。それに向けて、男子生徒は自分のパートナーの女の子に事前に髪を結ぶリボンを贈る風習がある。
本来、成人男性であれば意中の女性にはドレスやアクセサリーを贈る。
しかし、俺達のような学生にはドレスやアクセサリーを贈るのは難しい。なので、これはその代わりに生まれた文化だ。
これは成虫になれば黄緑色の光りを放つことを期待して試行錯誤中のものだ。それをお洒落な箱に入れて蓋を閉じ、リボンを掛けて綺麗にラッピングする。最後に、『君をイメージしました』とメッセージを添えた。
名前も知らないから『君』としか書きようがない。
俺はそれをもって親父のもとを訪れ、手渡した。
「これは何が入っているんだい?」
「良いものだよ」
「軽いね。お菓子かな?」
親父は不思議そうに箱を揺らす。中には何匹かのグロテスクな魔法蝶の幼虫と葉っぱが入っているだけなので、カサカサと軽い音がした。
「とにかく、それを先方に届けてくれ。色々と解決するはずだ」
「わかったよ。自分で届けに行かないのかい?」
俺は無言で首を振った。
ストーカー気質にメンヘラ気質を持ったヤバいやつの家なんかに届けに行ったら、監禁されかねない。俺はとにかくその問題大ありなご令嬢に関わり合いたくないんだよ。
親父は俺の顔をとその箱を見比べると、届けてくれる事を了承したようで「わかったよ」と言い、使用人を呼んだ。使用人が仰々しくそれを受け取り、部屋を去ってゆく。
正直、胸は痛む。
めちゃくちゃ痛む。
俺の名誉のために一つ言わせてくれ。
俺は普段は決してこんないじめまがいの陰湿な事をするほど落ちぶれてはいないんだ。
しかし、相手は何度断っても言葉の通じないストーカー気質に、メンヘラ気質を兼ね備えたいかれた令嬢だ。背に腹はかえられない。
ここまでぶっ飛んだ贈り物をされたら、流石の先方も俺への執着心をなくすに違いない。俺は大事にここまで育ててきた幼虫達に、心の中で深く謝罪した。
ご令嬢に謝罪? んなもん、するわけない。
◇ ◇ ◇
学園祭の最後を締めくくる舞踏会は学園のダンスホールで行われる。それに向けて、男子生徒は自分のパートナーの女の子に事前に髪を結ぶリボンを贈る風習がある。
本来、成人男性であれば意中の女性にはドレスやアクセサリーを贈る。
しかし、俺達のような学生にはドレスやアクセサリーを贈るのは難しい。なので、これはその代わりに生まれた文化だ。



