顔を近づけても嫌がる素振りや逃げる気配はない。心臓が煩いぐらいにバクバクだ。スザンヌが目を閉じたことを確認してゆっくりと唇を重ねる。
初めてのキスは緊張で頭が真っ白になってあまり実感がなかった。けど、柔らかなスザンヌの唇の感触は確かに感じることができた。
唇を離すと俺達はお互いを見つめて真っ赤になってはにかんだ。
「ケビンさま、好きです。ずっとお側において下さいますか?」
「当たり前だろ。俺もスザンヌが好きなんだから」
それを聞いたスザンヌは嬉しそうにまたはにかむ。その様子があまりにも可愛らしくって、俺は我慢できずにスザンヌを抱き寄せるともう一度キスをした。
◇ ◇ ◇
ある日の夕食のこと。
サーブされた牛の柔らか煮込みを食べながら親父の言葉を聞いた俺は驚きのあまり我が耳を疑った。
「いやー、ケビンが前向きになってくれてよかったよ。正直、父さんもあんなお方が相手じゃ断りようがなくって悩んでいたんだ。よかった、よかった」
「は?」
「だから、お前が婚約に同意したと先方からお聞きしたぞ。遂に決心してくれたとお嬢さんも大喜びしてたそうだ」
それは、三度も断ったお見合い話を何故か俺が同意したと先方が言っているという、意味不明な話だった。
だいたいからして、スザンヌがいるのにそんなことに同意するわけないだろ? 今、俺とスザンヌはラブラブなんだ。その話は出鱈目もいいところだ。
どうやら先方のご令嬢は何度断っても諦めないストーカー気質に加えて、都合のよい妄想を作り出すメンヘラ気質まであるらしい。
これは完全にヤバいやつに違いない。
「そんなこと同意してないよ。断ってくれ」
「え? でも、あちらは確かにケビン本人が同意したと言っていたよ?」
「同意なんかするかよ。出鱈目だ」
親父は明らかに困惑していた。
親父の態度から察するに、きっと断りにくい相手なのだろう。もしかしたら、没落貴族で何がなんでも我が家と縁を結びたいパターンかもしれない。
俺はハァッと溜息をつくと、両手をテーブルについて立ち上がった。
「わかった。じゃあ俺が先方に手紙を書くから、それを届けてくれ」
本当はこんな事したくないんだけどな。あっちがいかれた態度ならこっちもいかれたお返しをするまでだ。
初めてのキスは緊張で頭が真っ白になってあまり実感がなかった。けど、柔らかなスザンヌの唇の感触は確かに感じることができた。
唇を離すと俺達はお互いを見つめて真っ赤になってはにかんだ。
「ケビンさま、好きです。ずっとお側において下さいますか?」
「当たり前だろ。俺もスザンヌが好きなんだから」
それを聞いたスザンヌは嬉しそうにまたはにかむ。その様子があまりにも可愛らしくって、俺は我慢できずにスザンヌを抱き寄せるともう一度キスをした。
◇ ◇ ◇
ある日の夕食のこと。
サーブされた牛の柔らか煮込みを食べながら親父の言葉を聞いた俺は驚きのあまり我が耳を疑った。
「いやー、ケビンが前向きになってくれてよかったよ。正直、父さんもあんなお方が相手じゃ断りようがなくって悩んでいたんだ。よかった、よかった」
「は?」
「だから、お前が婚約に同意したと先方からお聞きしたぞ。遂に決心してくれたとお嬢さんも大喜びしてたそうだ」
それは、三度も断ったお見合い話を何故か俺が同意したと先方が言っているという、意味不明な話だった。
だいたいからして、スザンヌがいるのにそんなことに同意するわけないだろ? 今、俺とスザンヌはラブラブなんだ。その話は出鱈目もいいところだ。
どうやら先方のご令嬢は何度断っても諦めないストーカー気質に加えて、都合のよい妄想を作り出すメンヘラ気質まであるらしい。
これは完全にヤバいやつに違いない。
「そんなこと同意してないよ。断ってくれ」
「え? でも、あちらは確かにケビン本人が同意したと言っていたよ?」
「同意なんかするかよ。出鱈目だ」
親父は明らかに困惑していた。
親父の態度から察するに、きっと断りにくい相手なのだろう。もしかしたら、没落貴族で何がなんでも我が家と縁を結びたいパターンかもしれない。
俺はハァッと溜息をつくと、両手をテーブルについて立ち上がった。
「わかった。じゃあ俺が先方に手紙を書くから、それを届けてくれ」
本当はこんな事したくないんだけどな。あっちがいかれた態度ならこっちもいかれたお返しをするまでだ。



