遠い国で、飛行機を五回乗り継いでから、バスで丸一日かけて走ったところにあった。
 非常に貧しい国らしい。砂っぽい道には、ろくな店もない。日に焼けた痩せた人たちが、清々しい表情で元気よく歩いている。町のあちこちに、ごみの山が出来ていた。
 
 「コニチハー」
 と、みんな溌剌と通り過ぎてゆく。その中に彼の姿がないか目を凝らしたが、どの顔も真っ黒に日焼けして、みんな同じに見えた。

 「なにが、『全て洗い流すことができる国』よ」
 汚い町の有様に、わたしは悪態をついた。
 町の中央に大きな川が流れている。その川は人々の生活を支えていると言う。
 「人探しなら、川辺に行ってみたら」と、通行人に言われたので、川まで行ってみた。非常に臭かった。流れる水の色も汚い。
 だけど人々は喜々として、川で水浴びをしたり、水を汲んで家に持ち帰ったりしている。

 汚いのは見た目だけかと思っていたら、どんぶらこと何か流れてきた。よく見たら、口をぱっかんと開いた婆様が、ぷかりぷかりと流れている。
 「ぎゃっ」
 わたしはたまげた。この川には死体が浮いている。