近くの公園のベンチに、なだれ込む。

ようやく結界の外に出た俺は、そこで呼吸を整えた。

「無茶過ぎます。いきなりあんな強力な結界の中に飛び込んで、涼介の命を救うだなんて。獅子丸さまは、本気であの魂を奪うつもりがあるのですか?」

スヱにそう言われて、俺は苦笑いするしかない。

確かに契約はしていないが、あの場で涼介が死んで、結界の中でアズラーイールと戦うことになったとしても、ここまでのダメージを受けることはなかったかもしれない。

俺は額の汗をぬぐった。

「俺は魂が欲しいんじゃない。契約が欲しいんだ」

「魂を確実に手に入れるための手段が、契約です!」

腕組みをして怒るスヱは、再び輝きを取り戻している。

あの結界のなかに入れるほどの力を、いつの間に手に入れたのだろう。

「お前も強くなったな」

そう言うと、スヱは恥ずかしげに縮こまった。

「全ては、獅子丸さまのお陰でございます」

ようやく体力を取り戻した俺は、ぐったりともたれかかっていた背を起こした。

「獅子丸!」

涼介が公園に現れる。

真っ直ぐに俺のところへやってきて、俺の手を握りしめた。

「なんだよ、まだ学校、終わってねーぞ」

「途中で抜けてきたんだ。すぐ戻る」

その言葉に、俺は思わず笑ってしまう。

涼介らしい返事だ。

「獅子丸、俺のために、無理をする必要はない。俺は……、俺は、ちゃんと自分で死ぬ覚悟が出来てる。アズラーイールが教えてくれたんだ。もうすぐ、寿命が尽きることを。そして、安らかな死を、約束することを」

あのクソ天使めが。

余計なことしかしやがらねぇ。

「そんな言葉を信じるな。死は誰にも平等に訪れるが、皆が同じ死などありえない」

「だけど俺の魂は、聖人として天国に復活する」

涼介の言葉に、俺は舌打ちした。

アズラーイールとの取り引きは、これか。

だから涼介は、俺の誘いに惑わされない。