「アズラーイール! 出て来い! 話しがある!」

俺の呼び声に、ゲートが開いた。

「二度とお前の顔など、見たくはなかったのだが」

出てきたばかりのアズラーイールの、その胸ぐらをつかむと、俺は思いっきりそれを引きずり上げた。

「おい、お前、涼介に、どういう条件で祝福を与えた」

「天使が与える祝福に、条件のようなものがあるわけないだろう。悪魔とはちがうんだ。無条件に祝福は与えられる」

「じゃあ、なぜだ」

アズラーイールは、俺の手を振り払った。

「だから俺は、その時が来るまで、涼介の平穏を守ってやるつもりだったんだ」

「お前がやったのか?」

「それは違う。神の定めし人の寿命に、何人たりとも手を加えることはできない。我々はそれを、知ることが出来るだけだ」

振り下ろした拳を、アズラーイールは受け止めた。

「俺に当たるな。涼介のことを思うなら、大人しくしておけ」

そう言い残して、エセ天使は姿を消した。

俺は足元に広がる光の海の中に、涼介の魂の灯りを見つめる。

その魂は、残り数日の命だった。