俺たちは真っ直ぐに並ぶゲーム機に、並んで座った。

その向かい側に座る対戦相手の顔は、機械の壁に阻まれて見えない。

初めてプレイするゲームだとか、そういうことは、関係ない。

顔も知らない相手と、本気で、遠慮なく戦う。

バトルの後は、挨拶を交わすのも礼儀らしい。

だけど、それは画面の中だけの話しで、リアルに顔は、合わせないんだって。

俺はボロ負けして、涼介は勝った。

「お前、案外強いんだな」

そう言うと、涼介は少しうつむき加減につぶやいた。

「ま、昔やってたからね」

長く続く機械の行列の、その端から一人の男が顔をのぞかせ、すぐに引っ込めた。

どうやら、負けた俺ではなく、勝った涼介の顔をのぞきに来たらしい。

「リアルで負けたら、すぐに発狂するくせに」

そうつぶやいた涼介を、俺は見上げる。

「お前、前にもそんなこと言ってなかったか?」

「そうだっけ」

涼介の座る画面に、対戦の申し込みが入る。

相手は、裏側にいる奴だ。

「獅子丸がやる?」

そう言われて、俺は首を横に振る。

涼介は、台の上に置いたコインを1枚、カシャリとそこへ落とした。