「ご飯を食べよう。ここの場所なら、食べられるだろ?」

公園のような一角だった。

大きな屋敷の、どこかの庭好きな主人が手を入れたような、自分の好みではないが、かといって悪趣味ともいいがたい、少し周囲とは浮いたような環境にあるテーブルとベンチ。

そんな街並みを見下ろす高台で、涼介は背負ってきた弁当を取り出した。

「マジか」

「ダメ?」

「いや。涼介がいいなら、それでいい」

「いつも、ここで食べてから帰るんだ」

俺が腰を下ろすと、弟はその隣に腰掛けた。

分かってはいたけど、転倒した衝撃で、弁当の中身はぐちゃぐちゃになっていた。

トントンと箱を叩き、偏った中身を整える。

「ま、味は変わらないからね」

俺の前に、涼介は今朝作ったばかりの弁当を置いた。

隣で弟が口を開く。

俺はそれに笑えたが、声と顔には出さずにおく。

悪いがお前につき合うつもりは一切ない。

背を弟にむけ、テーブルに肘をつきそこに頭を乗せた。

「腹が減った。さっさと食おう」

中身は卵焼きと、小さな赤いトマト。

小さなハンバーグとコロッケと、ミニカップゼリー。

「子供の弁当みたいだな」

そういうと、涼介は笑った。

「そうでもないと思うよ」

涼介は黙ってそれを食べ始めたが、俺はそれに箸をつけようかどうしようか、考える。

涼介は何も言わないが、また隣の弟が口を開いた。

俺はプラスチックの箸を手にとる。

「その弟は、この弁当が本当に好きだったのか?」

「さぁ、どうだろうね」

弟は感情を露わにする。

俺はこれ以上騒ぐと、永遠にこの世界から吹き飛ばすぞと脅す。

ふわりとした風が吹いた。