涼介の、自転車をこぐスピードが加速した。

その全速力に、俺は必死でくらいつく。

こんなに速く走れるんだったら、さっきまでの自転車レースはなんだったんだ。

俺は奥歯を噛みしめ、足を動かす。

ようやく追いついたと思ったところで、涼介は急に向きを変えた。

「もういい、ついてくんな!」

俺は自転車を飛び降り、ハンドルを持ちあげそこから急転回させる。

遠ざかる涼介の背中を追いかけた。

「だったら、最初から誘うな!」

「やかましい! 俺だって、ちょっと後悔してんだ!」

曲がりくねった坂道を、山頂へ向かい登っていく。

俺は完全に息があがっていたが、涼介は平気なようだった。

その複雑に入り組んだ道を、迷うことなく進んでいく。

やがてその道は、ひらけた山頂へと出た。

見晴らしのいい高台に、突然切り開かれた場所。

涼介はそこに、自転車を停めた。

「帰りたかったら、別に帰ってもいいよ。本当に」

その独特な雰囲気の場所に、俺は口を閉ざした。

なるほど、涼介が行き先を告げるのをためらったわけが、分かった。

路線バスがやって来て、停留所に停まると、数人の客が降り、そこにまた数人が乗って出て行った。

俺は歩き始めた涼介の後を追いかける。