「アズラーイールさま!」

「お前はもう戻って、仕事の続きをしていなさい」

天界からのゲートが消えて、ようやく静けさが戻った。

テーブルの上には、まだ少し料理が残っている。

「もういらないのなら、片付けてしまおう」

そう言うと、アズラーイールは目の前の人参の欠片を一つ口にした。

そのまま黙々と片付けを進めるアズラーイールの横顔は、相変わらず無表情のままだ。

「残念だったな、この天使崩れめ。涼介を使って俺を騙そうとしたって、そう簡単にはいかねーぞ。これで分かっただろ」

表情を何一つ変えようとしない天使は、俺をじっと見つめる。

「俺はお前らには絶対に騙されないし、服従するつもりもない。絶対にだ。お前らがどれだけ邪魔をしようとも、俺は必ず目的を遂げる。それが俺の使命だからだ」

「獅子丸」

涼介の手が、俺に向かって伸びる。

それを振り払おうとして、だけどそれは涼介の腕をすり抜け、涼介は俺に触れた。

「触るな!」

俺からは触れられない体に、後ろに飛び退く。

「涼介、お前は、分かってたのか? 知ってたのか? どっちだよ、答えろ。こいつが俺の敵だってことを、こいつは絶対に、俺の味方や仲間ではないってことを、涼介、お前は知ってて、俺を今日、ここに呼んだのか?」

返事はない。

涼介の視線が、横へ流れる。

何も言わないということは、それが答えだということだ。

「最悪だな」

俺はそこから、姿を消した。