「腹減ってたのかよ」
「そうでもない」
涼介は、俺を見た。
俺はその目をじっと見返す。
何を考えているのか、読み取ろうとしても読み取れないのは、きっとアズラーイールが授けた、新しい祝福のせい。
このメンバーで食卓を囲むことなど、もう二度と、一生ありえないだろう。
何とも言い難い微妙な空気が流れる中で、俺たちは一言も口をきくこともなく、黙々と皿の上のものを胃に収める。
テーブルの上の料理が、ほとんどなくなりかけたころだった。
涼介はようやく、話し始めた。
「獅子丸、俺はね、お前ともう一度、ここで……」
ふいに、テーブルの脇にゲートが開く。
天界からのゲートだ。
そこから恐る恐る顔を覗かせたのは、一匹の小さな天使だった。
「おい、ドブネズミが顔を出したぞ」
俺がそう言うと、アズラーイールは、チッと舌をならす。
「なんの用だ。ここへは来るなと言っておいただろう」
「さすがは天使だ。どいつもこいつも、間抜けた面をしてやがる」
そう言って、俺は嗤う。
これは挨拶代わりのようなもんだ。
チビクズ天使は、驚きと恐怖にビクリと体を震わせた。
アズラーイールは、俺の頭を一発殴る。
「痛っ、ちょっと待て! この俺さまの頭を殴るとは、何事だ! 天使だろ? お前はお偉い天使じゃなかったのかよ!」
「どうした、何の用だ」
「あ、あの、どうしてもアズラーイールさまの決裁を仰がなければならない案件が、滞っておりまして……」
「見よう」
書類を渡した下級天使は、怯えたような目で俺を見ている。
俺はドンとテーブルに拳を突いた。
「おい、クソ天使! この俺に喧嘩を売るとは、いい度胸だ。どういうことになるのか、分かってんだろうな!」
突風を巻き起こす。
書類の数枚が舞い上がった。
「天界の極秘文書を俺の目の前に持って来るなんて、面白いじゃねぇか」
下級天使は、飛び散った書類を集めるふりをして、部屋の隅に縮こまった。
「アズラーイール! 俺がお前からの施しを受けたくらいで、それで手懐けたとか、悪魔から改心させてやろうとか、絶対にお前には出来もしねーこと考えて、調子こいてんじゃねーぞ!」
「そうでもない」
涼介は、俺を見た。
俺はその目をじっと見返す。
何を考えているのか、読み取ろうとしても読み取れないのは、きっとアズラーイールが授けた、新しい祝福のせい。
このメンバーで食卓を囲むことなど、もう二度と、一生ありえないだろう。
何とも言い難い微妙な空気が流れる中で、俺たちは一言も口をきくこともなく、黙々と皿の上のものを胃に収める。
テーブルの上の料理が、ほとんどなくなりかけたころだった。
涼介はようやく、話し始めた。
「獅子丸、俺はね、お前ともう一度、ここで……」
ふいに、テーブルの脇にゲートが開く。
天界からのゲートだ。
そこから恐る恐る顔を覗かせたのは、一匹の小さな天使だった。
「おい、ドブネズミが顔を出したぞ」
俺がそう言うと、アズラーイールは、チッと舌をならす。
「なんの用だ。ここへは来るなと言っておいただろう」
「さすがは天使だ。どいつもこいつも、間抜けた面をしてやがる」
そう言って、俺は嗤う。
これは挨拶代わりのようなもんだ。
チビクズ天使は、驚きと恐怖にビクリと体を震わせた。
アズラーイールは、俺の頭を一発殴る。
「痛っ、ちょっと待て! この俺さまの頭を殴るとは、何事だ! 天使だろ? お前はお偉い天使じゃなかったのかよ!」
「どうした、何の用だ」
「あ、あの、どうしてもアズラーイールさまの決裁を仰がなければならない案件が、滞っておりまして……」
「見よう」
書類を渡した下級天使は、怯えたような目で俺を見ている。
俺はドンとテーブルに拳を突いた。
「おい、クソ天使! この俺に喧嘩を売るとは、いい度胸だ。どういうことになるのか、分かってんだろうな!」
突風を巻き起こす。
書類の数枚が舞い上がった。
「天界の極秘文書を俺の目の前に持って来るなんて、面白いじゃねぇか」
下級天使は、飛び散った書類を集めるふりをして、部屋の隅に縮こまった。
「アズラーイール! 俺がお前からの施しを受けたくらいで、それで手懐けたとか、悪魔から改心させてやろうとか、絶対にお前には出来もしねーこと考えて、調子こいてんじゃねーぞ!」