「随分と、好き勝手なマネをしてくれているな」

それほど体は大きくない。

調整はしてあるのだろうが、これできっと、本来のサイズだ。

俺よりわずかに背の高い程度。

サランの言葉が、耳をよぎる。

「ウァプラ公爵家子息、鷲頭獅子丸とは、お前のことか」

なるほど。

コイツがそのご本人か。

俺は涼介の額に残る奇蹟を、ちらりと確認した。

「私の名はアズラーイール。その……、涼介に、祝福を与えた天の使いだ」

天界の住人らしく、白い布を体にまとい、背に大きな羽を出しっぱなしの天使が、ふわりと地上に舞い降りる。

アズラーイールは、腕組みをしたまま立っていた俺を、じっと見下ろした。

「なんだよ。驚かないのか」

「まぁ、いずれ来るだろうとは、思ってたし」

なるほど。

スヱが逃げ出すわけだ。

涼介の放つ光のオーラとは、比べものにならない。

確かにこの光を浴びれば、スヱのような低級妖魔は、一瞬にして消えさるだろう。

アズラーイールは、ため息をついた。

「俺も忙しいんだ。よけいなことはせずに、さっさとあきらめて、魔界に帰ってくれないか。おかげで俺は、他の仕事を全部放り投げてきたんだぞ。お前がここにいると、俺と俺の部下の仕事が増える」

「知るか。それはお前らの都合だ」

こっちには、こっちの事情ってもんがある。

「あーあ、残念な跡がついちゃったな」

アズラーイールは、涼介の後頭部に手をあてた。

天使なら、人間にも普通に触れることが出来る。