「金がほしけりゃ、くれてやる。また取りにこいよ」

投げつけようとした手を、涼介が抑えた。

「そんなの、早くしまえって!」

「どうして?」

「涼介、俺はなぁ、お前らのそんな態度にイライラしてんだ。金が出せないんなら、じゃあコイツの代わりに、お前が殴られろ!」

山下の拳が、涼介に向かう。

俺はそれを、片手で受け止めた。

「金は出す。やめろ」

「金で友達買うなら、誰を買ったって一緒だろ? なんでコイツなんだよ」

「仕方ないだろう。俺は涼介と、いたいからいるんだ」

さらに殴りかかってこようとするその腹の位置に、膝を上げて待つ。

そうだよな、金で買ってる人間の方が、分かりやすいうえに、便利だよな。

必要な時に必要な数だけ揃えて、用がなくなれば、きれいにお別れする。

そうするのが当たり前だと、俺も思っていた。

山下は俺が用意していた膝に、自分から腹をめり込ませる。

その衝撃で、後ろに数歩よろけた。

完全に、山下の方が正しい。

約束と条件は大切だ。

だから俺は、やっぱり涼介と契約がしたい。

「くっそ。いい加減にしろよ」

「だから、俺は何もしてないって。つっかかってくるのは、お前らの方だろ? なぁ、涼介」

涼介は、俺から人間に、直接攻撃出来ないことは知っている。

涼介はじっと黙ったまま、何も言わなかった。

「悪いのは、全部お前らの方だ」

とは言っても、魔法を使わずに素手でこいつらを倒すのは難しい。

全て受け身でなくてはならないのだ。

あぁ、でも山下の仲間の一人が、鉄パイプのような物を持ってるな。

それを使うか。

振り下ろされたそれを、片腕で受け止める。

俺はパイプをつかむと、ぐるりと一回転させた。