「まぁいい。時間はたっぷりあるからな。俺はお前と契約するまでは、どうせ帰れないんだ。いずれお前の方から、サインさせてくれと懇願するようになるのは、分かっている」

「うるせー、お前なんか誰が信じられっかよ、さっさと帰れ」

「なんだと?」

いい加減、俺だって我慢の限界だ。

たかだか人間ごときに、こんなデカい態度をとられる筋合いはない。

「俺が大人しく頼んでいる間に、決着をつけといた方がいいぞ。じゃないと、お前は本当に大変な目にあうことになる」

俺は、悪魔だ。

しかも、ただの悪魔なんかじゃない。

強力な魔力を有する、魔界公爵の息子だ。

「お前が本当に信じられないというのなら、今からそれを見せてやろう」

空中に、魔方陣を描く。

さて、どんな魔法でこいつをビビらせてやろうか。

「はー、めんどくせぇのが来ちゃったなぁ」

涼介は頭をぼりぼりと掻いてから、机の上に広げてあった参考書を閉じると、トントンと机に打ち付けてから、本棚に戻した。

「あのさぁ、お祓いとかしてあげちゃったらいいわけ? なに、塩? とりあえず塩撒くとか?」

「撒くな!」

「あ、やっぱ塩苦手なんだ」

「違う!」

こいつは、俺を何だと思ってるんだ!

「悪魔に塩は通用しない!」