勉強なんてする気はないから、涼介が宿題とやらをしている間は、俺は勝手に漫画を読んだりなんかしている。

ベッドを背もたれにして、小さな四角いテーブルの上にそれを広げて、ぼんやりとながめている。

時には階下でゲームもする。

涼介に教えてもらいながら、車でレースをしたり、モンスターを狩ったり、色塗り陣地バトルも楽しかった。

涼介は結構強くて、俺はすぐに落っこちたりやられたりしている。

「ゲームじゃ負けても、悔しくないの?」

「ま、所詮画面の中の出来事だし」

この結果が、なにか俺に影響を与えることは、一切ない。

ただの時間潰しだ。

「リアルで負けたら、発狂するくせに」

「それは当たり前だろ」

そう言うと、涼介は笑った。

「なんか飲む?」

涼介はいつも、砂糖だけの入った、甘い香り付きの液体を飲む。

「紅茶がいい」

涼介の入れてくれる紅茶は、香りが浅い上にカップが重い。

そもそもなぜ、紅茶を入れるのに、こんな無粋な寸胴のカップを選ぶのか、意味が分からない。

「文句を言うなら、お前が淹れろ」

そう言うから、サランに頼んだティーセットを1階のテレビ部屋に持ち込む。

サンドイッチにケーキにマカロン、スコーン用のジャムと、バターは3種類ずつ。

紅茶に入れるミルクにだって、産地と牛の好みはあるのだ。

涼介はその光景に、頭を抱えて何かをうなっていたが、カップに俺のお気に入りの紅茶を注いでやると、それを口にした。

「いや、普通にうまいよ」

「当たり前だ」

本当は、涼介の淹れてくれた紅茶だって、そんなに不味いわけではなかったんだ。

だだ、俺の好きな紅茶を、知ってほしかっただけ。

それを涼介に、飲ませたかっただけなんだ。

上品なティーカップを、上品とはほど遠い涼介が口にしている。

その光景が、俺は見てみたかった。

風呂に入るのを嫌がったら、無理矢理涼介に連れ込まれた。

これだけは許さない。

徹夜のゲームバトルは楽しい。