「じゃあ、うちに来いよ。一緒に住もう。あの家には俺一人だし、きっと楽しいぜ」

「一緒に住む?」

「シェアハウス的な感じで」

そのシェアハウスという概念が、よく分からない。

こんな小さな家を、どうやって分けようというのか。

涼介はうきうきとしていた。

俺はその後について、家の中に入る。

古い家の、二階の一室。

この家にはいつも、涼介があげる弟のための線香の香りが、染みついていた。

俺はその湿っぽい絨毯の上に座って、涼介の話しを聞いている。

「どこで寝る? 布団だそっか」

「俺はここで寝る」

腰掛けたベッドに手をかける。

涼介はおもいっきり眉根をよせた。

「そこは俺が寝るとこ」

「つーか、こんなところで一緒に住むのは無理だ。ゲートを作ろう。俺のうちと直結させればいい」

屋敷の扉をとりだし、涼介の部屋の壁に設置する。

その扉を開くと、背の高い天井に、絨毯の敷き詰められた重厚な廊下の続く、魔界の屋敷と繋がった。

「え? これが獅子丸のうち?」

開けた扉の奥から、魔界の澄んだ空気が流れ込む。

涼介はそこへ、一歩を踏み入れた。

「すげーな」

「こっちだ」

俺は、自分の部屋へと案内した。

まぁ、ある意味ここの部屋は全部、俺の部屋なんだけどな。

横に300メートルはあろうかと屋敷を、一本の長い廊下が真っ直ぐに貫いている。

俺たちは、ふっくらと靴の沈む絨毯の上を、ゆっくりと歩いた。