「単純に気持ち悪いバカだったな。イノシシだから、野ブタか」

俺が笑ったら、隣で涼介はうずくまっていた。

「なんだ。吐きそうなのか?」

「今のはかなり、気持ち悪すぎただろ」

「あはは、以外と繊細なんだなぁ」

俺は改めて、涼介に契約書とペンを差し出した。

「とんだ邪魔が入ったが、ここに頼む」

涼介は、視線を俺に向け直した。

「本当に、サインしなければ、友達になれないものなのか?」

俺には、涼介が何を言いたいのか、何を言おうとしているのかが、分からない。

「そうとは、思えないんだけどな」

涼介は今度は、契約書に見向きもしない。

「俺と獅子丸は、もう友達じゃないのか?」

「そうなのか? 本当に、そうなのか?」

「そうだと思うよ」

その言葉に、俺は息を飲む。

亜空間にされた世界を、正常な人間界に戻した。

涼介は魔界に属する者ではなく、この世界に属する者だ。

本当に、そんなふうに思ってくれているんだろうか。

「なぁ、涼介、俺は……」

涼介はそんな俺を無視して、歩き始める。

「涼介。あ……、だけど、ほら、きちんとした約束っていうか、これは、証みたいなモンだから」

俺がそう言ったのに、涼介は笑った。

「大丈夫だよ、そんなものがなくたって、俺と獅子丸は、もう友達だ」

「ち、ちがっ、違うんだ、涼介」

「何が?」

振り返るその無垢な微笑みに、俺はどう説明していいのか分からない。