「俺は、お前と仲良くなりたいんだよ、本当に。俺が心から、仲良くなりたいと思った人間は、そうめったにいない。珍しいくらい、貴重な存在なんだよ。涼介は」

「俺はなぁ!」

 涼介がようやく振り返った。俺は真面目な顔をして言う。

「本気なんだよ。信じてくれ」

「はぁ~いぃぃいぃぃ! じゃあ、あたしがお友達になってあげますぅぅ!」

突然、不安定に奇妙な高い声で、目の前にこの学校の制服を着た人間が現れた。

だけど、コイツは明らかに人間じゃない。

「お名前、なんていうのぉぉおぉ! あたしの名前はねぇ、なんて呼んでもいぃよぉぉっっ!」

女の姿をしているつもりだろうが、能力の低いせいで、まともな姿になっていない。

鼻をつく悪臭と共に、泥と腐った肉片の合間から、ひび割れた骨が見え隠れしている。

それでも必死で形状を保とうとしているのか、ドロドロと流れ落ちようとする肉体を、常に逆流させながら不器用に近づいてくる。

「な、なんだよコレ!」

その不気味な光景に、涼介は取り乱した。

慌てて逃げ出そうとする背中に、俺は腕を回す。

それにぶつかって、涼介は踏みとどまった。

「大丈夫だ。心配するな」

人間には触れられなくても、低級の地縛霊となれば、話しは別だ。

コイツは先日、黒蝶の使いを俺に送った、妖魔の類いだ。

「邪魔だ。消えろ」

 右手をかざす。そこから出す軽い波動だけで、一発だ。