「悪かったよ。謝るから許してくれ。大体、いきなり現れてアレはなかったよな。俺はさぁ、実は初めてだったんだ。こうやって外の世界に出てくることも、誰かと『友達』になろうとすることも」

涼介の目が、俺を見下ろす。

話しは聞いているようだ。

どうすれば涼介の心が、俺の手に入るのだろう。

人間の心を操るもの。

「なんでも言うこと聞いてやるよ。涼介ってさ、ほら、すごく頑張ってるじゃないか。いつも一人で、誰も見てないところでもさ。そういうの、他の奴らは気づいてないみたいだけど、俺は知ってるよ。涼介のいいところとか、優しいところ」

再び背を向けて歩き出す。

足の動きは止まらない。

だけど、反論も拒否もない。

俺はそのまま続けた。

「俺は、涼介のそういうところがいいなって思ったんだ。だから、仲良くなりたかったっていうか、その、涼介自身にも、自分で自分のいいところは認めてやってほしいなって。気づいてほしいなって」

「ほとんど学校にも来てないくせに、知りもしない相手に向かって、よくそんなセリフが言えるな」

「だって、みんなそう言ってるよ、クラスの奴らはみんな、本当はいいヤツだって、言ってたんだ。そうやって、俺に教えてくれた」

涼介は笑った。

「どうせ嘘つくなら、もっとうまくつけよ」

「そんなことないって!」

「これ以上、俺の神経を逆なでしたら、本気で殴るぞ」

「俺は、涼介と友達になりたいだけなんだ」

ここで怒ってはいけない、と、書いてあった。

とにかく相手を持ちあげて、気分良くさせること。

上から押さえつける手段は、持ちあげが成功した後で、相手の出方によって、交互に順番を変えること。