放課後の学校の廊下で、俺は涼介を待つ。

人混みの中から俺を見つけた涼介は、大きなため息をついた。

「ホントしつこいよね、お前も」

「それはこっちのセリフだ」

「ろくに学校にも来てないくせに」

歩き始めた涼介の隣に、俺は並ぶ。

「どこに行ってたんだよ」

「お前には関係ない」

「あっそ」

彼の横顔は、怒っているようにも見えた。

「なんで俺じゃなきゃダメなんだよ。せめてその理由を聞かせろ」

「だから、金の矢が刺さったからだって」

「俺は真面目に聞いてんだけど」

涼介は頭をボリボリと掻いた。

何を言っても信じてもらえないのは、悪魔の特性なのかもしれない。

「そうだ、涼介。友達はほしくないか? お前いっつも一人だろ。ちやほやしてくれる、優しい友達がいれば、それでよくないか? そういうの、いいだろ?」

涼介は深く長い息を吐いただけで、歩みを止めようとはしない。

「な、便利だろ? 気分いいし。たまんないよな。じゃあ、俺がなってやるよ。ちょうどいいだろ。悪魔の友達だなんて、他に持ってる奴、いないぞ?」

「それが契約内容か」

「友達の頼みなら、聞けるんじゃないのか」

「お前さ、もっと言い方とか、あんだろ。ちょっとは考えろよ」

「なにがだ」

友達がなんたらかんたらとか言い出したのは、涼介の方だ。

昨日の夜、人間研究の魔界書を読んだ。

人間と接する時には、友達のように親しく親切に接するのが、第一の手だと。