「こっちだ」
涼介のいる教室の前まで戻って、廊下からのぞき込む。
等間隔に並んだ人間どもは、驚いたようにこっちを振り返った。
「あいつだ。あいつをこの校舎の屋上までつれてこい。今すぐだ」
「え? あいつを今? 授業中だぞ」
涼介の目が、順番に男と俺を見比べる。
「今すぐと言ったら、今すぐだ」
教師が何かを叫んでいる。
俺はそれを無視して歩き出し、階段を上った。
屋上へと繋がる扉には、鍵がかかっている。
驚くほど単純な鍵だ。
それを破壊すると、俺は外に出た。
錆び付いたような扉を開けると、サッと外気が流れ込む。
長い間、誰も足を踏み入れていなかったであろうその場所は、水垢のような苔が所々にはりつき、ひび割れ黒ずんでいる。
周囲には高いフェンスが張り巡らされていたが、それもすっかりボロボロだ。
腰を下ろす場所さえないことに、俺はうんざりとする。
今度はあいつに、椅子を持ってこさせよう。
そう思っていた俺の目の前に、一匹の蝶が羽ばたいた。
手を伸ばすと、その黒く美しい蝶は、指先に留まる。
『魔界の王子に祝福を』
この辺りに潜む、下級妖魔の使いか。
ふっと笑うと、すぐにその蝶は飛び上がった。
「いずれ、役立つこともあるであろう」
なんとなく、父さんのマネをしてそう言ってみる。
俺ってやっぱかっこいい。
ちょっとだけ、偉くなった気分だ。
俺は満足して後ろを振り返った。
すぐにと言ったのに、本当にすぐにはやってこない。
これだから人間というのはアテにならないんだ。
俺は一つあくびをすると、そこに寝転がった。
涼介のいる教室の前まで戻って、廊下からのぞき込む。
等間隔に並んだ人間どもは、驚いたようにこっちを振り返った。
「あいつだ。あいつをこの校舎の屋上までつれてこい。今すぐだ」
「え? あいつを今? 授業中だぞ」
涼介の目が、順番に男と俺を見比べる。
「今すぐと言ったら、今すぐだ」
教師が何かを叫んでいる。
俺はそれを無視して歩き出し、階段を上った。
屋上へと繋がる扉には、鍵がかかっている。
驚くほど単純な鍵だ。
それを破壊すると、俺は外に出た。
錆び付いたような扉を開けると、サッと外気が流れ込む。
長い間、誰も足を踏み入れていなかったであろうその場所は、水垢のような苔が所々にはりつき、ひび割れ黒ずんでいる。
周囲には高いフェンスが張り巡らされていたが、それもすっかりボロボロだ。
腰を下ろす場所さえないことに、俺はうんざりとする。
今度はあいつに、椅子を持ってこさせよう。
そう思っていた俺の目の前に、一匹の蝶が羽ばたいた。
手を伸ばすと、その黒く美しい蝶は、指先に留まる。
『魔界の王子に祝福を』
この辺りに潜む、下級妖魔の使いか。
ふっと笑うと、すぐにその蝶は飛び上がった。
「いずれ、役立つこともあるであろう」
なんとなく、父さんのマネをしてそう言ってみる。
俺ってやっぱかっこいい。
ちょっとだけ、偉くなった気分だ。
俺は満足して後ろを振り返った。
すぐにと言ったのに、本当にすぐにはやってこない。
これだから人間というのはアテにならないんだ。
俺は一つあくびをすると、そこに寝転がった。